開口部
2011.2.21付 朝日歌壇より
老体の開口部みなゆるみきてあふれでるものみないとほしき:(川崎市)仁科光雄
高野公彦評:露骨な表現を避けているが老いがまざまざと体の各部に現れる悲哀を詠む。
なんだかね、金子兜太氏が歌壇に乗りこんで来そうな感じがしますね。きっとお喜びになる。
口に始まり知りに終わる消化管ね、これ開口部。
さて、肺は体の表面が内側にくぼんだもの。鼻や口は開口部。
腎臓から膀胱、尿道ね、これも体表面が内側にくぼみこんだもの。開口部。
「悲哀」といえばそうかもしれないけれど、滑稽感、とほほ感を強く感じますね。
我が身のことながら、思うにまかせなくなって、情けないやら可笑しいやら。
私のような自分自身を観察して楽しむ人間には、老いもまた観察対象。若い頃には想像しなかったことが、そして年長者を見てはなんでああなるのかと思っていたことが、今、自分に起こってきていますよ。おもしろいことです。
●おまけ
トイレ論争というのがありましてね。男性も座って用を足せ、でないと便器が汚れて仕方ない、というのです。
老いてきた男の立場を手短にご説明しましょう。
男性は必ず前立腺が肥大します。病気でなくても肥大します。これは確実なこと、避けられないこと。
すると、排尿時間が長くなるのはもちろんなのですが、排尿感が薄れてしまうのですね。尿が今出ているのか終わったのか、感じとりにくくなるのです。また、尿を切る動作をすると、その後再度排尿を続けることができなくなる。残尿感になる。
で、座位で排尿すると、自分の排尿感覚がないのでうまく終われなくなってくるんです。
立位で排尿して、視認する、音で確認したくなるわけですね。
若い時より立位での排尿の必要性は高まるんです。
昔のような、男性用小便器があった時代は、男は幸せだった。
洋式便器の普及は、老いた男性には不幸なことです。
いいじゃあないですか、少しくらい汚れたって。
すっきり排尿させてあげましょうよ。
女性は漏れに悩み、男性は出なくなって悩み。
まぁ、お互い様。年とったんだもの。
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