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2011年1月 6日 (木)

自然発火

1月5日付けの毎日jpに「タオル自然発火:美容オイル酸化の熱で 2人死亡火災も」という記事が載っておりました。

 

美容オイルのしみこんだタオルが自然発火する事故が相次いでいる。昨年は、富山市のアロマセラピー店で出火し、08年には福島県の高齢者施設で2人死亡の火事が起きるなど、過去5年間で21件が判明している。オイルの酸化に伴って発生した熱が逃げ場をなくすと高温になるためで、経済産業省などが注意を呼び掛けている。
 富山市では10年11月27日午前2時半ごろ、閉店後の無人のアロマセラピー店で出火。床に重ねて置かれたタオルから出火したとみられ、床など約1平方メートルを焼いた。従業員によると、タオルは美容オイルでマッサージする際に使い、26日午後5時半ごろ洗濯・乾燥を済ませた。県警は、タオルを乾燥機にかけた際、しみついたオイルが酸化反応によって発熱し、取り出し後に重ねて置いたため熱がこもり発火した可能性が高いと結論づけた。
 独立行政法人「製品評価技術基盤機構」(NITE)などによると、美容オイルなどの植物性油は酸化しやすい「不飽和脂肪酸」を多く含むという。機構の実験では、美容オイルが付いた衣類を洗濯・乾燥機にかけ、かごに重ねて置いたところ、かご内は最高427度に達し、約2時間15分後に発火した。植物性の食用油や機械油でも同じことが起こるという。
 機構のまとめでは、油のついたタオルが自然発火したとみられる火災は05年4月以降39件あり、うち21件は美容オイルが原因。大半がエステティックサロンやアロマセラピー店で、住宅やホテルでも発生。08年12月には、福島県いわき市の老人介護施設で2人が死亡、3人が重軽傷を負う火事があり、マッサージ用の美容オイルを拭き取ったタオルが原因とされた。機構の担当者は「ぼや程度なら報告されないこともある」とし、実際の件数はさらに多いとみている。
 油分は洗濯しても完全には除去できないため、機構や経産省は美容オイル類が付いた衣類は自然乾燥させるよう呼び掛けている。

 この記事ではアロマセラピー用のオイルが発火したことがメインですが、記事内にあるように他の油でも起こり得るものです。
とくに身近なのはてんぷら油です。
てんぷらを揚げた後の油を鍋から拭きとった紙などを丸めてゴミ箱に突っ込んでおくと、やはり自然に酸化されて、熱が蓄積し、火事になります。これも結構多い事故ですのでご注意ください。

 植物油の分子内には炭素と炭素の「二重結合」が、動物の脂肪分子よりも多くあります。二重結合が多いと融点が下がり常温で液体の油となります。
そして、二重結合の部分は単結合より不安定で、空気中の酸素が結びつきやすいのです。
 植物油脂を含む食品や菓子に「脱酸素剤」というのがよく入っていますよね。あれ、鉄です。袋の中の酸素で鉄が錆びてしまうので、袋の中の酸素がなくなるわけです。ミニ化学カイロといえるようなものですね。
 酸化された油は健康によくありません。油っぽい食品は袋の封を切ったらなるべく早く食べてしまいましょう。保存していると油が酸化されてしまいます。
 さて、酸化反応が起きると発熱します。
発熱すると酸化反応の進む速さがはやくなって、より多くの熱が発生します。熱が発生すれば反応が速くなって・・・
遂には紙や布が燃える温度になってしまうのですね。
熱が伝わりやすくて、発生した熱がどんどん逃げていけば温度は上がらないのですが、紙や布は断熱性がいい。で、熱が蓄えられてしまうのです。

あなどるなかれ、なのです。

ところで、去年の暮に、出来事は違いますが出来事の本質部分は同じという事故がありました。2010年12月27付の朝日新聞です。

積み上げた石炭の山から出火 山口・宇部市の宇部興産
 27日午前5時50分ごろ、山口県宇部市小串の宇部興産の貯炭基地「沖の山コールセンター」の近くを通ったトラック運転手から、「石炭の山が燃えている」と119番通報があった。宇部署によると、センター敷地内に積まれた石炭の山(底辺の直径約25メートル、高さ約15メートル)の頂上部分が焼けた。約2時間後に鎮火し、けが人はいなかった。
 現場は宇部港に突き出た埋め立て地。宇部興産によると、約40万平方メートルの敷地内に大小様々な石炭の山が50~80カ所ある。出火したのはタンカーから陸揚げされた石炭で、重量は約6万トンという。消防は自然発火の可能性が高いとみている。

 最近は日本での炭鉱はほとんど活動していないので、こういう事故を聞く回数は減りました。
昔はよくあったんですよ。自然発火によるボタ山の火災。
石炭1個を目の前に置いておいても、熱くなったりはしません。いつまで見ていても火を噴いたりはしません。
ですが、空気中の酸素分子のうち速度の速いものが石炭の炭素原子に衝突して、たまには炭素の酸化が起こってはいるのです。
でもその頻度が低いので、発生した熱は全部外へ逃げてしまいますので、石炭1個が自然発火することはありません。
ところが、石炭を山積みにしておくと、炭素原子が酸化されて発生した熱が逃げられずに籠るんですね。熱がたまると酸化反応が速くなる、そうすると熱がたくさん発生する・・・という加速サイクルが働き始めると、石炭の山が自然発火してしまうことがあるのです。

初めに御紹介したのは油の酸化、次が石炭の酸化。
酸化による発熱、発熱による反応の加速、こういう観点からは同じ本質の出来事だったのです。
年末年始を挟んで、前後して読んだ記事でした。

ご注意ください。

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