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2011年1月26日 (水)

鉄は打てば熱くなる

2011年1月24日 (月)に「かかし先生の試験問題」というのを書きました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/cat22454470/index.html

金箔づくりで、金の小片を紙に挟んで次々と重ね、ブロック状にして機械で叩き延ばします。すると発熱するのです。

この問題、ミクロに見ると厄介です。熱が実際に発生しているのはどの場所なのか、それはわかりません。機械の槌が当たる場所なのか、紙と金の接触面なのか、金の内部なのか・・・
測定結果があるわけではないので、これはとても議論できません。
この場合、全体として出来事を眺めて下さい。

●槌が運動エネルギーを持って、金+紙のブロックに衝突する。一瞬停止し、槌は引き上げられ、また機械の力で運動エネルギーを与えられて、金・紙ブロックを叩く。これが繰り返されているわけです。
この機械の消費するエネルギーは機械自身の摩擦や振動などにも費やされるでしょうが,
それはこの議論には関係ないので無視。槌の運動に使われたと考えましょう。
さて、槌の持っていた運動エネルギーはどうなったか、という問題です。
外見的にはその運動エネルギーは消えました。
消えた結果、別の形のエネルギーに変わったのです。
電気?いえいえ。光?いえいえ。
熱エネルギーですね。
槌という物体の目に見える運動が、衝突によって金・紙ブロックを構成する原子たちのナノレベルでの運動を激しくしたのです。
原子の運動が激しくなる=熱が発生するということですね。
もし、金・紙ブロック全体に均一に熱が発生したとしても、金は温まりやすく、紙は温まりにくいですから、金が強く「熱く」なるのですね。

●いつだったか、正月のニュースで刀鍛冶の初打ちのシーンを見ました。
まず炉に火を入れるのですが、その点火に用いる「火」はどのようなものだったか。
ニュースでは何も言っていませんでしたが、見ていた私はストンと納得してしまった。
刀匠は片手で使う槌で、もう一人は両手で重い槌をふるって、金床の上で短い鉄の棒を交互に叩くんですね。
しばらくそれを続けると鉄の棒は熱くなるので、火のつきやすい付け木のようなものに点火し、それを紙に移し、炉の炭に移すというような手順で炉に火入れをしていました。
「鉄は熱いうちに打て」とよくいいますが、この場合は「鉄は打てば熱くなる」なんですね。
刀匠たちが消費したエネルギーは槌の運動エネルギーとなり、それが鉄の熱エネルギーに変わったのです。
Strike while the iron is hot. がもとの諺}
{Strike, so the iron becomes hot. かかしさんが理解した事実}

金箔を作るのと同じですね。
金箔の場合は薄くすることが目的で熱の発生は副次的な現象。
刀鍛冶の火入れでは、発熱させることが目的で、鉄棒の変形は副次的なこと。
それだけのことです。
同じ出来事なのです。

エネルギーの変換が起こったということが見て取れるようになると世界が広がりますよ。

●乾布摩擦とかいうのはこのごろはやらないのかな。
でも、摩擦熱というのは有名ですね。
摩擦というのはマクロな物体同士の表面での出来事です。
机の上に物を置いて押しつけて動かすと両者の接触面に熱が発生するのですね。

「力を加えて動かす」ことを「仕事をする」といいます。

・チョロQをつまんで、力を加えて後ろへ引くという仕事をチョロQにしてやると、その仕事はチョロQ内部のゼンマイバネを巻き上げるという形で、バネの変形のエネルギーになって「貯えられ」ます。
で、チョロQを放すと、バネにたくわえられたエネルギーが解放されて、チョロQがダッシュします。
・ゴム動力の飛行機のプロペラを指で回すと、力を加えて円周上を押していくことになり、仕事をします。
その仕事は、ゴムの変形として貯えられて、解放されると、飛行機を飛ばします。
・びっくり箱の蓋に力を加えて閉じるという仕事をすると、バネの変形のエネルギーとして貯えられます。
開けた人はそのエネルギーが解放されて人形が飛び出してきてビックリするわけです。
・滑り台に登るには重力に逆らって登るという仕事をして、高いところにあるという「位置エネルギー」を貯えます。斜面に乗って手を放すと、位置エネルギーが運動エネルギーに変わって滑り降りてきます。
・夜間に余った電気エネルギーで、発電機を逆回ししてモーターにして水をダムにくみ上げるという仕事をすると、水の位置エネルギーの形で電気を貯えられます。昼間、水を落として発電機を回すと電気エネルギーが得られます。

さて、上では、してやった仕事がエネルギーとして貯えられる例を見ましたが、もし、そのように貯えられていなかったらどうなるのか?
そういう時には熱が発生しているのです。

身近なところで
ゼムクリップなどの針金を、同じ場所で繰り返し折り曲げていると、やがて鉄がもろくなって折れます。このとき折れ口に触るとやけどするほど熱くなっていますよ。
摩擦熱もその例なんですね。

電子レンジではマイクロ波の電波のエネルギーが外見上消えます。
よく水分子が摩擦して発熱、と説明しますが、それはない。
水分子には「表面」というものがない。摩擦のしようがない。摩擦はマクロな物体の表面での出来事ですからね。
マイクロ波が水分子をまとめて揺さぶるんですね。その揺さぶりが個々の分子の運動エネルギーの増加になり、発熱として現れるのです。

●冗舌になりました。こんなところで了解していただけたでしょうか。
試験問題は自己採点でどうぞ。
おお思ったとおりだった。まあいい線いってたな。ちょっとまずったかな。見当はずれだった。
大雑把に採点してみて下さい。

金箔が青く透けて見える話↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-59d4.html
2009年10月15日 (木)「金箔」

金属箔の話しなど↓
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-a94c.html
2009年12月21日 (月)「おまけ」

是非ご覧ください。

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