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2011年1月24日 (月)

クニマス

理科話を一席。

●去年の12月に秋田県の田沢湖では絶滅したクニマスが山梨県の西湖で発見されたというニュースが報じられました。

クニマス絶滅してなかった! 生息確認、さかなクン一役(朝日新聞 2010年12月15日)
 環境省のレッドリストで「絶滅」扱いになっている日本固有の魚クニマスが、山梨県内の湖で生き残っていたことが、京都大学の中坊徹次教授らのグループの調査で分かった。生息の確認は約70年ぶり。国のレッドリストで絶滅種に指定された魚が再発見されたのは初めて。環境省は今後、レッドリストの記述を見直す方針だ。
 クニマスはもともと、秋田県の田沢湖にのみ生息する固有種で、成長すると全長30センチほどになる淡水魚。食用魚として漁業の対象にもなっていた。だが、1940年以降、発電などのための導水工事で田沢湖に酸性の水が入り、まもなく死滅。地球上から姿を消したと考えられていた。
 クニマスの生息が確認されたのは富士山に近い山梨県の富士五湖の一つ、西湖(さいこ)。今年3月から4月にかけて西湖で地元漁協が捕獲した通称「クロマス」と呼ばれる魚9匹を中坊教授らが分析した。
 全体に黒っぽい体色だけでなく、エラの構造や消化器官の形などがいずれもクニマスと一致した。1~3月に産卵するという生態も、過去に記録されていたクニマスの生態と同じだった。また、遺伝子解析の結果、西湖に生息するヒメマスと異なり、ヒメマスと交雑したものでないことが裏付けられた。近く、クニマスの生息確認を報告する論文が、学術専門誌に掲載される見通しだ。
 中坊教授が今年2月、研究者としての好奇心もあり、旧知でテレビなどで活躍する東京海洋大学客員准教授のさかなクンに、生き生きとしたクニマスの姿を絵で再現するよう頼んだのがきっかけだった。さかなクンが絵の参考にと近縁種のヒメマスを西湖から取り寄せると、黒一色の魚が届いた。
 田沢湖で絶滅する5年ほど前、放流用にクニマスの卵が10万粒、西湖に運ばれた記録がある。このとき放流されたものが繁殖を繰り返し、命をつないできたとみられる。
 西湖では以前から、ヒメマスに似て体色が黒っぽい魚がおり、「クロマス」と呼ばれていたが、地元では「黒いヒメマス」と考えられていた。
・・・

●玉川毒水、田沢湖の酸性化、中和事業、などは高校化学の教材として手頃なので、在職中いつも酸・塩基・中和のところで使っていました。
 田沢湖に流入させた玉川温泉の水はpH約1.3という強烈な酸性です。成分は塩酸。
それに対して、もう一つすごく有名なのが草津温泉の酸性水。これは硫酸酸性です。石灰乳で中和して、品木ダムで沈殿させるというような話も、NHKの教育番組から録画して生徒によく見せました。

詳しいことは下のサイトでどうぞ。
http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/various/k-tamagawa.html
http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/various/k-yukawa.html

●その後、1996.2.8付の朝日新聞記事で「秋田・田沢湖町 クニマス探しに賞金100万円」というのがありました。
また1997.9.15付の朝日新聞記事には「『幻の魚』に懸賞金」という記事が載り、賞金500万円だという話でした。「WANTED」という手配ポスターまで作ったということでした。

 

このような記事はその都度生徒に授業通信という形で配布し、実際に酸・塩基の授業にかかると再度プリントしたりしたものです。

●こういう「手配」が行われるようになったということは、中和が進み、クニマスがもし見つかったら、田沢湖に連れてくれば生息可能になったのだな、と思っていました。
 ところが、今回のクニマス発見騒動で明らかになったことは、そうではないということでした。がっかりですね。

クニ帰り、できマスか…秋田・田沢湖、酸性水の流入続く(朝日新聞 2011年1月4日)
・・・
 クニマスなど淡水魚の生息に適したpH値は6.7~7.5とされ、これまでも水質改善の動きはあった。89年、国は玉川上流に石灰で中和する施設を建設。その結果、湖水のpHは70年ごろの4.2から、98年は5.7まで回復した。しかし、玉川温泉の酸度は、火山活動の影響で変化する。原因は不明だが、02年ごろから過去90年で最も高くなっており、湖水の09年のpHも5.2に下がっている。
・・・

 pH5.2はpH6.7に対して水素イオンが約30倍濃いということです。まだまだ生息可能にはなりませんね。

 クニマスは西湖でひっそり生き続けてもらうのが一番でしょう。
秋田県のどこか、人工的な水域で飼育することができるならそのようにして、田沢湖の中性化を待つのも手かもしれません。
自然の湖へ放してはいけません。その湖の在来の生態系に対する「外来種」の撹乱ということになりかねませんから。

 クニマスに関して色々な観点から書いてみたいという気はあるのですが、今回は、かつて化学教師として教材に使っていたという立場をメインにして書いてみました。

●計算に関して
Siki1
単純化すると、pHの定義はこうです。
水素イオン濃度の常用対数をとるということは、簡単にいえば、濃度の「桁」をとることなのです。小数点以下何桁目から数字が現れるか、という桁がわかります。
小数の桁ですから、1つ変われば10倍、1/10という変化に相当します。
また、小数点以下の話をしていますから、数字が大きい方が水素イオン濃度は小さいのです。
Siki2
対数の定義から、水素イオン濃度そのものを求めるにはこう変形します。
で、pHのところに5.2と6.7を入れ、濃い方を薄い方で割って、何倍濃いのかの倍数を求めてみます。
Siki3
こうなります。
電卓で10の1.5乗を計算すると、31.6位になります。
ところで、この場合、うまいこと見積もりがしやすい数字になっています。
Siki4
「ルート1000」なんですね。30の自乗が900ですから、まあ、そんなもんでしょうということで、約30倍としました。
湖のpHの議論ですからこの程度の見積もりで十分です。

ちょっとノートの端にメモして計算してみるのもいいことです。

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