冬のカマキリ
2010.12.6付 朝日歌壇より
円空仏の笑いあう声聞こえきて祠のぞけば冬のカマキリ:(蓮田市)斎藤哲哉
馬場あき子評:荒彫りの円空仏の寄り合う祠と冬のカマキリの共存がいかにも楽しげ。
冬のカマキリって、もう命の瀬戸際だと思います。おそらくはもう餌の昆虫も少ないし、餌を取る力も尽きかけている。飼育下なら、ピンセットで肉片を差し出してやるとかろうじてカマにはさんで食べるという状況でしょう。
いくら円空仏と一緒だからと言って、「いかにも楽しげ」というのは、虫好きの私には頂けません。
円空仏のもつ豊かな生命感、祠にさしこむ太陽の光のぬくもり、それらに支えられる命の瀬戸際のカマキリ。
去りゆこうとする命の一瞬の輝きをとらえたスナップのような歌だと私は感じます。
決して楽しい交歓とは思えません。
カマキリは間もなく去っていくでしょうが、円空仏がその命を讃えて下さるのではないでしょうか。
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