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2010年12月22日 (水)

沈丁

朝日新聞の夕刊に論説委員が交代で書く「窓」というコラムがあります。
12月20日付けの「窓」は「詩歌に詠まれた物理」でした。引用します。

 暗記した知識の量ではなく、実生活で出くわす場面に対応する力を問う。国際的な学習到達度調査(PISA)の昨年の結果が公表された。自治医科大名誉教授の青野修さん(73)はPISA型学力を測るような、独創的な物理の試験問題作りに約30年取り組んできた。
 この学問には、難しく、とっつきにくいといった印象がつきまとう。そんな誤解を取り除くためにも、物理の面白さや楽しさを伝えたいと考えた。
 俳句や短歌には自然現象を正確に表現したものが少なくない。そこで詩歌を活用することを思いついた。
 例えば、こんな問題を大学の入学試験に実際に出題した。
 問い=次の句に詠まれた不可逆現象はどれか。選択肢から答えよ。

沈丁(じんちょう)の香の石階に佇みぬ(高浜虚子)

 選択肢=①拡散 ②蒸発 ③熱伝導 ④熱放射 ⑤電気伝導
 正解するには、俳句や短歌から状況を感じとり、解答に必要な情報を抽出しなければならない。感性が問われ、暮らしの中で経験した事柄なども含めた総合的な判断が必要になる。こんな問題を解けた受験生は、ほかの科目の得点も高い傾向が見られたという。
 独自の問題作りは思った以上に手間がかかるらしい。ちなみに先ほどの問いの答えは①。若者の理科離れを抑え、科学好きのすそ野を広げるためにも、こうした手間を惜しまない先生が一人でも増えてほしい。

いかがでしたか。
私は理科教師でしたから、正解しましたよ。
拡散という過程は、自然に自発的に逆戻りすることはできません。
それが「不可逆現象」です。
すごく簡単な言い方にしますと、「映画で撮影して、逆回ししたら『ありえねぇ』となるような出来事」です。
沈丁花の花から香りが漂い出す。花のところが香り分子濃度が一番高くて、香り分子濃度の低い空間へ、空気を作る酸素分子や窒素分子に叩かれながら広がって行きます。
これが拡散。
分子が写せるとして、一様に広がった香り分子が、自発的に花のところへ集まって行く、というのはあり得ませんね。
コーヒーカップに角砂糖一つ。かき回さずに長時間放置しておくと、コーヒーは冷め、砂糖は一様に溶けてカップ内に広がる。
熱いものが冷める、砂糖が均一に広がる、どちらも不可逆です。

フィギュアスケートのフィルムを逆回しにします。多少のぎこちなさはあっても、そう違和感はない。氷の上でほとんど摩擦なしで起こる現象は逆戻しができることが多いのです。
ほぼ可逆的。

ビリヤードの台が写っている、玉は散らばって静止している。
突然、玉たちが動き出し、衝突を繰り返しながら、集合し、三角形にきれいに集まった。
これはあり得ませんね。
不可逆。

ところで、教師現役の時代、私にはちいさなこだわりがありまして。
教師になった最初から、退職後の嘱託員の終わりまで。
定期テストで可能な限り1題は、自分で考えて自分の考えを述べる記述問題を作る。

「君の考えを述べよ」

です。
5点くらいの配点ですから、小さなこだわりです。
自分で考えたことが伝わる解答なら、正答でなくても6割あげるよ。
逆に、答としてはあっていても、考え方を書かなかった場合も、6割しかあげないよ。

初め戸惑っていても、何回かのテストで、私のこのスタイルを理解してくれると、生徒たちはいろんなことを書くんですよ。
これが楽しくってね。
問題作りには時間がかかります。
でも、採点の楽しみがありますからね、やめられない。

そういう教師でした。

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