« 青くなって | トップページ | このハエの名前を教えて下さい!⇒ツマグロコシボソハナアブでした! »

2010年12月24日 (金)

キバハリアリ

ウチダザリガニの話を書いた時に、染色体が2本しかないアリのことをちらっと書きました。
あれは「キバハリアリ」であることが分かりましたので、追加して書きます。

出典は「ありとあらゆるアリの話」久保田政雄 著、講談社、昭和63年1月26日刊 です。
この本の130ページあたりから部分的に引用します。

・・・
同じように恐れられているアリに、オーストラリア特産のキバハリアリの仲間がいる。このアリは古いアリの祖先の性質をいろいろ残し持っていて、いわば原始的なところが興味深い。オーストラリア全土に約90種類分布しているが、主として乾燥地帯に棲息し、巣はたいてい地中につくる。なかには大形の種類のように、巣の上に土を盛って低い塚状になっているものもある。日本のアリの場合、巣の出入り口はアリ1匹がやっと通れるだけの大きさだが、キバハリアリのなかには、子どもの手のひら大の巣口をつくっているのがある。ずいぶん不用心な感じだが、原始時代のアリの巣は、あんがいこんなものだったかもしれない。
 大形のキバハリアリの働きアリは、体長2.5センチぐらいだが、これに刺されると、日本のスズメバチよりも痛く、手のひら大に赤くはれてしまう。痛みは少しずつ弱まるが1、2週間は続き、はれは人によっては2、3ヵ月も残るほどだ。もし、こんなアリに体のあちこちを刺されたら、それころ命にかかわることになるだろう。
 それに、このアリはしつこい。普通のアリは巣を掘り返したりする敵に向かって、コロニー防衛のために刺したり、咬んだりする。だから、敵が巣から離れてしまえば攻撃をやめるが、キバハリアリはしばらく後を追ってくるから油断できない。こういうと、ハチの巣にいたずらして、ハチに追いかけられたことを思い出す人もあろう。キバハリアリには、祖先がハチだった時代の性質が残っているのかも知れない。ただ巣のそばに近寄っただけでも、大あごを開いて威嚇の構えを見せるなど、だいたいが攻撃的なアリなのである。
 そんなところから、このアリのことをオーストラリアの人は「ブル・アンツ」(雄牛アリ。現地ではヴォール・アンツと発音する)と呼んで恐れているが、雄牛といっても闘牛のイメージなのであろう。私もかなりキバハリアリの巣を調べてみたが、十分に注意はしているから、あまりさされたことはない。それでも小形の種類では、つい油断して指をやられたことは何回かあった。疼痛は2日ぐらいで消えたが、その後は赤くはれたところがむずがゆくなり、5日ほどで治った・・・・・・と、私の野帳にも記録が残っている。
 ― あるとき、ユーカリの林で、一人のオーストラリア人と立ち話をしていたことがあった。運悪くその人の立っていた所が、大形のヴォール・アンツの巣だったからたまらない、怒ったアリが足の上に這い上がってきた。彼は身長2メートルはあろうかという大男で、プロレスラーのような体格をしていたが、アリに気づくや「ウオーッ」と大声で叫んで横っ飛びに逃げ出した。雄牛のように強そうな男でも、恥も外聞もなくわめきながら逃げ出すほど、この“雄牛アリ”の恐ろしさは知られているわけなのである。
・・・

ここまでがキバハリアリの「恐ろしさ」の話。
続いて染色体の数の話。

 このキバハリアリについて、最近、学問上のおもしろい発見があった。シドニーにあるニューサウスウエールス大学動物学部のクロスランド君は、英本国から来ている若い研究者だが、染色体が一対しかないキバハリアリを見つけたのである。これまで染色体数の最も少ない多細胞動物は、馬の体内にいる回虫の一対2 本で、これはすでに19世紀末から知られている。しかし、最近の研究によれば、回虫の染色体数が少ないといっても、それは生殖細胞だけで、体を構成する大部分の体細胞では数十の染色体に分かれてしまうことがわかった。ふつう生物の体細胞は、形の等しい2組の染色体から成っていて、一つは母親(雌)から、もう一つは父親(雄)の系統を受け継いでいる。ところが、雄アリは雌アリの半分の染色体しか持たないから、このキバハリアリの雄は染色体が1本しかない、ということになる。
 このアリが発見された場所は、首都キャンベラ郊外のチドビンビラで、NASAの大形電波望遠鏡が設置されている場所として有名である。しかし、その後熱心に探索されたにもかかわらず、たった一つのコロニーしか見つかっていないので、このアリが染色体数異常なのかどうか、まだ判断は下せない。だが、生物学的に非常に興味のある対象なので、オーストラリア、日本両国間の複雑な手続きを経て、コロニーが三島市(静岡)にある国立遺伝学研究所に送られてきた。さらに詳細な研究が進めば、学問上も画期的な事実がわかるかもしれない、と期待している。

その後の研究で、単なる染色体異常ではないことが確認されたようです。
新種としてクロスランドキバハリアリという名がついたということです。

ずいぶん前の読書ですが、頭の片隅に引っかかっていました。
思い出せてよかった。

« 青くなって | トップページ | このハエの名前を教えて下さい!⇒ツマグロコシボソハナアブでした! »

動物」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: キバハリアリ:

« 青くなって | トップページ | このハエの名前を教えて下さい!⇒ツマグロコシボソハナアブでした! »

2021年4月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ