賑やか
2010.10.11付 朝日俳壇より
賑やかが静けさであり虫月夜:(旭川市)大塚信太
稲畑汀子評:虫の音が高く賑わうのは辺りが静かだからと思う。
無音のことを静かという、のではないと思うんですよ。
辺りが無音であるから、虫の声が高く賑わうというのは、ちょっと皮相的。
音の存在そのものを「静か」といっているのでしょう。無音よりもむしろ、静かである。
「静か」というのは音の有無のことだけを言っているのではありますまい。
夏の熱気が去り、秋の風が吹き、日中の残暑の気配を地面近くに残しつつ、夏の草いきれとは違う、滅びへ向かう枯れ草の香りがまじる。
月の光も水蒸気のこもった光ではなく、透明感が溢れている。
そういう全体を「静か」というのでしょう。
そういう中で、虫たちが鳴けば鳴くほどに、静かさが増すのです。
{しずけさや岩にしみいる蝉の声
というのもありましたっけ。}
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