桃剥けば
2010.9.20付 朝日歌壇より
桃剥けば雫は肘にまでつたふ甘きをわかつ人はあらなく:(徳島市)磯野富香
永田和宏 評:寂しさはこんな何気ない瞬間に不意に襲ってくる。「雫は肘にまでつたふ」の具体が秀逸。
瑞々しい桃の皮をするするっとむくと、果汁が溢れ、手をつたい、肘にまで伝う。
見事な描写ですね。
その甘くべたつく果汁を手に伝わせて皮をむいて。
食べてくれる人がいない。うまいなぁ、と言ってくれる人がいない。
一人で口にする桃の甘さの、空しさ、切なさ。味気なさ。
切ないですね。
で、思い入れし過ぎかな、配偶者を失われたばかりの永田氏の「寂しさは何気ない瞬間に不意に襲ってくる」という評の言葉は、おそらく実感であろうと、推察します。
気が張っていた間はいい。
季節は秋。
季節性の鬱にも襲われやすい時です(私がそうなので。)
心確かにお保ちください。
作者も。選者も。
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