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2010年9月27日 (月)

爆発事故

化学工場で爆発事故がありました。

住友化学三沢工場で爆発事故、作業員1人が死亡 青森(2010年9月24日)
 24日午後2時20分ごろ、青森県三沢市の住友化学三沢工場で、引火性の液体を入れる屋外タンク(直径約2メートル、高さ約2.8メートル)が爆発した。タンク上部で1人で修繕作業をしていた建設作業員が、約3メートル下の地面に転落し、間もなく死亡した。工場は家庭用殺虫剤の原料を製造しており、タンクは定期修理のため8月から内部の液体を抜き、空だったという。
(後略)

「原因がわからない」 住友化学事故(2010年09月25日)
 三沢市三沢淋代平の住友化学三沢工場で24日、屋外のタンクが爆発し、タンク上にいた作業員1人が地面に転落し死亡した。タンクは通常、殺虫剤の原料になる引火性の液体が入っているが、事故当時は修繕のため空だったという。長田伸一郎工場長は「(修繕に伴い)タンク内の洗浄も済んでいたと思う。原因がよく分からない」と話した。
 タンクにふだん入っている「3メチル2ブテニルアセテート」は、引火のしやすさが灯油などと同じ「第2石油類」の液体だが、定期修理期間の今は製造ラインが止まり、液体も8月6日に抜き取られていた。なぜ爆発が起きたのか今後、三沢署などで原因究明を進める。
(後略)

実際の物性も知らずに何も確実なことがいえるわけではないのですが、「空だったのに爆発した」というのはちょっと単純すぎませんか?
少しでも化学をかじった人なら「空だったから爆発した」と考えると思うんですよ。

可燃性の液体がたっぷりあると危険だと普通の人は思います。それは確かにそうですが。
例えば、ガソリンが洗面器に入っていたとしますね。そこへマッチを付ければ大きな炎で燃え上がるでしょう。それは怖いことです。でも、それだけです。
屋内で灯油と間違えてガソリンを入れて点火して火事になることはありますので、そんなことをしてはいけません。
では、自動車のエンジンの中では何が起こっているでしょう?
エンジンに液体のガソリンを注入して着火して炎が燃え上がった、というようなことをしているでしょうか?していません。
あらかじめ気化させて、空気と混合し、点火して爆発させているのです。
可燃性の液体が、気化した時は危ない。「燃える」のではなく「爆発」になり得ます。
普通、爆発なんて考えない、エチルアルコールだって、気化させて点火すれば爆発します。そういう死亡事故も知っています。
アルコールが瓶にたっぷり入っている時は、火がついて火事にならないように注意します。もし、瓶の底にあるかなしかの僅かな量の液体があって、瓶の中はほとんど蒸気だ、というときがいちばん危険なんです。
可燃性の液体一般についてこのことがいえます。

上の事故では、「3メチル2ブテニルアセテート」という可燃性の液体のタンクをほぼ空にした状態で、タンクの外で作業をしていたんですね。何か火花が飛ばないとは限らない。蒸気があれば爆発しますよ。
これは一番危険な状態じゃないですか。
危機管理がなっていない。というべきでしょうね。
事故の原因究明はまだのようですし、その結果を私たちが知ることはまずないだろうと思うので、ここでひとこと先に発言してておくことにします。(事故は報道されても、その事故の事後の原因究明はまず報道されませんのでね。)

◆ところで「3メチル2ブテニルアセテート」という物質名表記が気に入らないなぁ。元化学屋の神経を逆なでしますねぇ。
「3-メチル-2-ブテニルアセテート」としてください。

・炭素が4個枝分かれなしに並んでくっついたブタン分子の鎖の端にアルコール基「-OH」がついています。
ブタンの語尾を、アルコールを示す「オール」という語尾に変えて
「ブタノール」です。

・そのアルコール基がついた炭素から1番と番号を付けて4番まで番号を振ります。
で、2番の炭素と3番の炭素の間が二重結合になっています。ブタンの語尾「アン」が二重結合があるよということで「エン」に変わります。
「2-ブテノール」といいます。

・3番の炭素にメチル基がつきます。
で「3-メチル-2-ブテノール」です。
Alcohol

・例えば、エタノールが酢酸とエステルをつくると「エチルアセテート」といいます。
ですから、このアルコールが、酢酸(アセティック アシド)とエステルを形成すると
「3-メチル-2-ブテニルアセテート」
になるんですね。
Acid
これが酢酸

Solvent
これが問題の可燃性物質です。

IUPAC命名法という国際的なルールがありましてね。
一つの物質には一つの名前。一つの名前が決まると、命名規則をたどって、必ず一つの物質の構造式が書ける、ということになっているのです。
ですから、物質の名前を報道する時にはきちんと報道してほしいと思うのです。
さもなければ完全な通称でいいですよ。半端に書くのが一番いけないな。

こういう、一つのものに一つの名前、というような時に、理数系では「ユニーク」な名前、という言い方をします。日本語のユニークとはかなり意味が違いますので笑わないでください。
「他に無い、唯一の」という意味です。
 パソコンのファイルなんかで、無精して適当な名前をつけていると、保存時に名前が衝突して、上書きしてよいかと問い合わせがでて、何の気なしにOKしてしまうと、大事なファイルを失いかねません。ファイル名は常にユニークな名前を付けるようにしましょう。

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