父の日
2010.8.23付 朝日歌壇より
父の日に何を買おうと困ったが結局買わずかたたたきする:(柏原市)島田真菜実
この歌、作者は名前からして女性でしょうね。
さて、歌だけを見ることにしましょう。
作者の性別も年齢も不明である、歌だけがある、として読みこんでください。
小学生くらいの子(男女不問):父の日にプレゼントしようと思ったんだけれど、おこづかいは自分で使っていいんだよ、とか諭されたり、何を買ったら喜んでもらえるか分からなくて、結局、肩叩き券をつくるとか、肩叩くよ、ということになった。
肩叩きされる父の方は、小さな拳の力を背に感じて嬉しかったりして。
成人した娘:ネクタイもベルトも、今いちありふれてるなぁ。子どもの時風に肩叩きにしようか。父、照れる。とうさん意地張ってないで肩叩かせなさいよ、と。女性のやわらかな手を感じる。大人になったのだなぁ。
成人した息子:父親に何か買ってくるということに、息子は照れる。父の日だぜ、肩叩こうか。
あまえなぁ、手加減しろよ、肩がほぐれないで、却って痛くなるぞ、とぶつぶつ。でも、大きな手で叩かれ、力強くもまれると、感慨ひとしお。昔は腕相撲しても勝てなくてむきになってかかってきた息子、もう腕相撲には勝てないな。
老年期へかなり入り込んだ父親に:今さら何を買ってあげるという年でもなし。何十年も昔にかえって、ここはひとつ、肩でも揉んであげようか。
がっしりとした大きな方だったはずだが、こうやって今肩叩きをしていると、小さくなってしまったなぁ。
まだまだ色々なシチュエーションが考えられます。
一切の介在情報を排して、作品だけで想像世界を広げてみてください。
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