むくろ
2010.8.2付 朝日歌壇より
三千の母子(おやこ)の骸の横たわる豚舎の脇の白い露草:(真庭市)岡田耕平
高野公彦 評:作者注に「宮崎の口蹄疫防疫に派遣された獣医師です。大規模繁殖豚舎で殺処分に従事しました」とある。動物の大量死と無関係に咲く白い花が、心の深い部分に衝撃を与える。
「大量死」という言葉に違和感を覚えます。豚は勝手に死んだんじゃない。ヒトが殺したんです。そのことを意識していないと作者に申し訳ないです。
獣医師をなさる方は、基本的に動物が好きなんです。動物を生かすことが仕事なんです。
なのに、殺さなければならない。大量に。
その「大量の殺戮、殺処分」の脇に「白い露草」。
そのコントラストの強烈さを読み取って下さい。
農家の方も、獣医師も、心ならずも、悲しみにくれながら、殺すしかなかったんです。人の身勝手かもしれません。その最前線に添えられた白い花。
苦痛と悲哀への献花でもあったでしょうか。
つらいよなあ。
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