砂浜
2010.5.31付 朝日歌壇より
砂浜がもっと広くて白かった頃には亀の卵食べたよ:(浜松市)桑原元義
いえ、歌の鑑賞ではありませんで、スミマセン。
個人的な話。
私の母の実家は海のそば。白神山地が海に迫るところなんですが、昔、銅の鉱山があって、精錬所があったのですね。そこから出る廃棄物が真っ黒な塊で。その塊が波で砕けて、この鉱山の周辺の海岸は黒い砂浜なんです。砂粒も粗くて払えばぱらぱら落ちる、かけらですので尖っていて皮膚に軽く刺さる、そういう砂でした。
小学校1年生。海の絵を描いたところ、私は浜を真っ黒に塗った。で、先生がビックリして、母を呼び、心理的に何か抱えているものがあるのではないか、などとおっしゃったらしい。
母は慌てて、実家から黒い砂を送ってもらい、学校へ見せに行ったそうです。この子は砂浜と言えばこの黒い砂の浜しか知らないのです、と。
よく笑いながら聞かされたものです。
実際、私が白砂青松というのをしたのはずっと後のこと。砂って白いんだぁ、粒が細かくてべたべた貼り着いて気持ち悪いものなんだなぁ、と思ったのでした。
時を経て、母が亡くなった時、母の実家の黒い砂が私の手元にありましたので、母の遺骨のごく一部を黒い砂と共に三浦半島の海岸へ流してもらいました。私は動けるたちではないので、孫全員が一緒に出かけて行って、海へ灰をまいてきてくれたのでした。
心が広々としました。母は狭い暗い墓の石の下なんかに閉じこめられてはいない。
地球に遍在となった。
すべての海はつながっています。
母は地球にあまねく解き放たれた、と感じて心が軽くなりました。
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