フーコー振り子
アサヒ・コムを読んでいたら、青森の記事でこんな記事を見かけました。
日本一の振り子火事 制御装置から出火(2010年05月12日)
11日午後1時40分ごろ、弘前市文京町の弘前大学理工学部2号館1階物理学実験室にあるフーコー振り子の制御装置が燃え上がり、装置のほか壁約2平方メートルが焼けた。火災警報機の鳴動で駆けつけた職員らが消火器で消し止め、午後1時59分に119番通報した。弘前署で出火原因を調べている。出火時、実験室にはかぎがかかっていてだれもおらず、人的被害はなかった。
弘前大によると、出火した制御装置は、振り子の振動が空気抵抗などで小さくなって止まるのを避け、振動し続けるようにするため、3月に設置した。4月から毎週月曜日に授業で使い、今月10日に実験室を使用したあとは部屋にかぎをかけていた。
フーコー振り子は、直径23センチ、50キロの重りをつるすワイヤの長さが45メートルあり「日本一の長さの振り子」として知られる。11階建て2号館の吹き抜けを利用して重りをつっていた。新設した制御装置は、電磁石を使って重りの振動を一定に保つもので、電磁石で加える微弱な力をパソコンなどで制御していた。
弘前大サイエンスパークの展示の一つ。宇宙空間から見れば同一面で振り子は振動するが、地上の観察者からは振り子の振動面がずれていくことから、地球の自転を証明できる。振り子は北緯40・5度にあるため、1時間に約9・8度ずれることを、観測できる。
(後略)
太字は私がつけたものです。
こういう記事を読むと、無性に計算したくなるたちです。
●45mの振り子というと、周期はどのくらいなのか?
振り子の周期の式は下のようになります。
T=13.5秒
となりました。
周期ですから、行って戻ってくる往復の時間です。ずいぶんゆっくりした振れですね。
東京上野の科学博物館にもフーコーの振り子があるのですが、これは長さが19.5mですので、周期は8.9秒です。
普通の家では実験できる長さではないので、実物を見学にいけるならぜひ行ってみてください。
上の式で、数値の部分を先に計算してしまいますと
T=2.007√(L)
となります。ですから、もし1mの長さの振り子を振らせると、周期2秒、片道1秒の正確な秒を刻む振り子ができますよ。
この式を用いて、弘前大学の振り子のおもりの体積を計算してみましょう。
直径23cmですから体積V=6370立方cm
すると、密度は50000g/6370立方cm≒7.8
鉄の密度を理科年表で調べると7.9くらいですので、このおもり、間違いなく鉄製ですね。
さて、振り子の振動面は宇宙空間に対して動きませんが、地球は自転します。逆に地球上から見ると振り子の振動面が回転していくように見えます。これがフーコーの振り子という実験の意味です。地球が自転していることの直接的な証拠になるのですね。
ω=15度/h
弘前の緯度40.5度≒41度で計算すると
15×sin(41)=9.8度/h
となります。
これが記事中に使われた数値ですね。
北極では緯度90度で、sinの値が1ですから、振り子の振動面は1日で360度まわります。
赤道では緯度0度で、sinの値が0ですから、赤道上でフーコーの振り子の実験をしても、振動面の回転は観測できません。
◆コリオリの力という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
あっさり言ってしまうと、フーコーの振り子の振動面が回転して見えるからには、何かの力が働いているに違いない、と回転する地球上からは見えますね。
その力がコリオリの力です。見かけ上の力です。
北半球の台風の風が反時計回りに吹く、というようなときによく引き合いに出されますね。
赤道上では振り子の振動面は回転しませんから、コリオリの力もゼロですね。
赤道近くの土地で、洗面器のようなものから水を流出させて渦をつくり、赤道より北と、南で渦の向きが違う、などということをやって見せる商売があるようですが、全くのウソであることは明白ですね。だって、コリオリの力はゼロだもん。
穴の形や、水の入れ方、など、どうにでも人為的にコントロールできるのです。
はまらないでください。
◆フーコー自身が1851年にパリのパンテオンで行った実験で使った振り子は
長さが67m、おもりの重さは28kgだった、とウィキペディアに載っていました。
周期16.4秒ですね。まぁ、すごい振り子だったのですね。
振り子の糸やワイヤを、つりさげ点に固定する方法に、向きの偏りがあるとこの実験なかなかうまくいきません。このあたりが高校物理などでこの実験をやるときの難しいポイントになります。
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