桜、雪
2010.5.10付 朝日歌壇より
桜、雪、桜、雪、雪みちのくの四月半ばの桜、雪、雪:(福島県)美原凍子
高野公彦 評:桜と雪を交互に出して寒い春を美しく詠む。
実は今回の歌壇・俳壇では、この寒い春を詠んだ歌・句が複数あります。
雪を見て花見て月を見る日かな:(長野県)縣展子
稲畑汀子 評:これは何と季題を重ねたものであるか。満開の桜に雪が降り、夜は晴れて月が出たという。「見て」という動詞を三つ重ねて、それぞれ花を中心とした句にまとめた妙。
これは、初めの歌の俳句バージョンともいうべきでしょうか。
雪月花と重ねた面白さであると同時に、実際に、雪をのせた花が月光を浴びるという、写生の句であるはずです。写生をしたら、異なる季節の季題が重なっただけで、季題にとらわれていてはこの句は生まれません。自在さがみごとです。
散り急ぐなく花冷のつづくかな:(名古屋市)中野ひろみ
春なのに針の音して雨がふる:(東京都)吉竹純
「針の音」というのは、「雨」とはいえ氷を含んだ「みぞれ」「氷雨」のことではないでしょうか。
確かに、異様に寒い花の季節でした。
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