触媒
3月1日付の朝日新聞の記事に(元理科教師として)面白い記述を見つけました。
記事のタイトルは「15歳 存在自体が戦力」という今回の冬季オリンピックに関する記事です。編集委員の西村さんという方が執筆しておられます。
私自身はオリンピックの大騒ぎというものが鬱陶しくって、一切中継など見ませんでしたが、新聞記事の見出しなどを通じて、おおよその事態の進行は把握しています。
この記事は、15歳のスケーターの話。一部だけ抜き出します。
しかし、高木は重要な戦力だったのだ。昨年12月の選考会。1500mに勝利し、シンデレラのようなデビューを果たし、五輪代表に選ばれた。先輩3人の気持ちは複雑だった。高木が団体追い抜きに出たら、自分が出られなくなる可能性があった。
高木はチームの「触媒」となったのだろう。高木がいなければ、この好成績はなかったかもしれない。試合後、3人が銀メダルを15歳の少女にかけたのは、そんな意味合いがあった。
ここに「触媒」という言葉が出てきました。彼女自身は競技に出場できなかったが、その存在が先輩たちの気持ちに火をつけた、それを、化学でいう「触媒」にたとえたのですね。
高校で化学を学んだ方はこんな言い方で学んだと思います。
自身は反応の前後で変化しないが、少量でも化学反応の速さを著しく大きくする物質を触媒という。
さて、西村さん、ここまで書いて、はたと思った。
「触媒」というのは適当ではないかもしれない。高木自身の中でも、化学変化が起きていた。「自分はまだメダリストにならなくてよかった。ソチ五輪につながるのかなと思う」。五輪への思いが強くなった。
触媒は反応の前後で変化しないものなのに、高木さんはオリンピックの前後で、この試合の前後で、自分自身が変化してしまったぞ、成長してしまったぞ、とね。
いや、元高校教師としては、「ニヤッ」ですね。
西村さんの文章に「○」あげます。配点の、満点あげます。触媒の定義をよく理解していた、とね。
単なる例え話ですから、まあ、どうでもいいのですけれどね。西村さんという方は、きっと、少なくとも高校の化学はとてもよく理解しておられるにちがいない、と、全然違うことを脳裏に浮かべながら読んだ私なのでした。
しょうもない人ですねぇ、私って。何見てるんだろう?
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