絹ごし
2010.2.7付 朝日歌壇より
絹ごしの豆腐をそつとてのひらにのせて切るなど誰に伝へむ:(ドイツ)西田リーバウ望東子
永田和宏 評:母から受け継ぎ、自分もしてきた動作も、もはやこの国では必要がない。その寂しさ。
私、還暦過ぎの男ですが、一応、この技は持っております。手のひらに豆腐をのせ、研いで切れ味をよくした包丁で、すっと切る。
今はねぇ、子にけがをさせてはいけない、とかいって刃物の扱いがなおざりですよね。
刃物は切れるものがいい。そういう刃物が自在に使えてこそ「手を使うサル」なんですけどねぇ。
私があんまり気合を入れて包丁を研ぐと、トマトの皮を切るときに刃がめくれる、と母が言いました。
均一に薄く研いではいけないんですね。加減がある。
技そのものよりも、「豆腐を切るという調理」のない国に生きるさびしさ、望郷の歌なのですね。
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