おまけのお話し4:色のある結晶
食塩といい、ホウ酸といい、実験に使ったのは色がない物質。
無色透明な物質を粉末にすると白い粉末になります。
ガラスを粉にしても白い。
ダイヤモンドフェイクに使う美しい酸化チタンの結晶を粉にすると、ポリ袋に練り込んでも白さを保つ白色顔料になる。油絵の具のチタンホワイトも。
きっと、ダイヤモンドの粉末も白い。保証できますが、やってみたことはない。
色のある物質の結晶を見たらきっと喜ぶだろう、と用意したのが二つ。
これは硫酸銅の結晶です。
この青い色は、銅イオンが水で囲まれている(配位といいます)時に示す色。
結晶の中に水分子も組み込まれているのですね。
直方体を斜めに押しつぶしたような形をしています。
これは、銅の実験をした後に廃液を回収し、硫酸で溶かして放置して作ったのだったと思います。きれいでしょ。
化学が好きになった人というのは、最初のきっかけのところに「美しい色」に感動した、という人も多いので、こんなものを生徒に見せてあげました。
案の定、展覧会スタイルで見てもらったら、ここで立ち止まってしまう生徒が非常に多かったですね。
本当は下のような組み合わせを、全部見て、「溶液」というものを理解するといいのですけれどね。
無色 有色
透明 ① ②
不透明 ③ ④
①は食塩でも、ホウ酸でも、ミョウバンでもいいでしょう。
②は硫酸銅、二クロム酸カリウムなどが非常に美しいのですが、銅やクロムがあるからなぁ、ちゃんとした廃棄設備がないとなぁ。
③は冷水にでんぷんを浮遊させるとか、でんぷん糊でもいいかな。
④は絵の具を水に溶いたらいいでしょう。
こうやって、観察して、「色の有無にかかわらず透明になったもの」を溶液というのだと理解させたいですね。①や②です。
③や④は、不透明なので溶液ではありません。せっけん水も溶液とはいいません。
もうひとつ気になるのは、「無色」と「白」の混同でしょうね。これはなかなか難しいのだと思います。白、灰、黒は「色ではない」のですが、これをちゃんと理解するのはかなり難しいのでしょう。
これは「硫黄の結晶」
硫黄の粉末を見たことがある人は多いのですが、こういう結晶を見たことはないと思います。きれいですね。生徒も、なんだ、ナンダと大騒ぎでした。
「硫黄だよ」というと、「臭いのか?」
いえいえ、全然匂いはない。
世間で「硫黄の匂い」といっているのは、「硫化水素」の匂いでして、硫黄そのものはほとんど匂いません。硫黄の粉末の瓶のふたを開けて鼻を近づけると、二酸化硫黄くさいかんじはしますけれどね。
「硫黄の匂い」という誤解は何とかなくせないものでしょうかねぇ、と元化学教師は真剣に思うのでした。
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