野焼き
2010.2.15付 朝日俳壇より
密林も虎も去りゆく野焼かな:(高知市)竹本一光
金子兜太 評:徒に森林を焼き払う者たちを憎む句。
これは焼き畑農業のことを言っていると思います。
焼き畑農業に限らず、実は農業というものは自然破壊なのだということを意識しているでしょうか。
植生の多様性を破壊して、単一作物をつくるという行為が、自然破壊でなくてなんでしょう?
「野焼き」のシーンにも深い疑問を感じています。
植物のカリウム分が土に戻されて翌年の実りをもたらすのでしょう。
でも、昆虫ファンとしては、すごく悲しい。
カマキリの卵なんかどうなりましたか?
越冬中のテントウムシなんかどうなりましたか?
ヒトの身勝手、と私には映るのです。
日髙敏隆さんの「世界を、こんなふうに見てごらん」という本がつい最近出版されました。
集英社から。2010.1.31発行。です。
まるで詩集のような始まり方にひきこまれ、読みはじめて見ればその内容の激しさ深さにうたれました。
・人間が一度自然に手を入れてしまうと完全にはもとに戻らない。
・人間はここまで破壊的なのかという印象を持つ。
・自然はすごいというより、人間がすさまじいと思う。これから我々人間はそういう自覚を持つ方がいいのではないか。
・ああ、これは手つかずの自然だなんて、うっかり思ってはいけない。人間が入ったらもはやそこは自然ではないのだから。
・人間がいかに破壊的かという見方に立てば、簡単に「自然を守りましょう」なんていえなくなる。
・どこかの環境に手をつけない形で人間が入るなど、もしできるといわれてもほんとうかと疑ったほうがよい。人間は自然を破壊するものだ。そうはっきり認識しておくほうが、よっぽど自然を守ることにつながる。守っているといいながら破壊している人間がたくさんいるのだから。
ひどく悲観的な部分を引用してしまいました。でも、真実だと思います。
単純に、「徒に森林を焼き払う者たちを憎む」とだけいって済ませられはしないのです。私も人間だから。私も自然の破壊者なのです。
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