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2010年1月13日 (水)

洗牌

恋する大人の短歌教室(2010/01/04)
{応募作}
洗牌でかたかた触れるきみの手は あのこのてのひら温める手:東京 松本紗知

 麻雀を題材にした短歌とは、珍しい。洗牌はシーパイと読むようですが、要するに牌をかきまぜることだそうです。お正月ですから、帰郷した家族やめったに会えない友達と楽しんだところだ、という読者もいるかもしれませんね。しかし、この歌の作者は、楽しむどころではない様子。ひそかに心を寄せる男性が加わっているのに、彼が愛しているのは別の女性だと分かっている以上、洗牌のときに手が触れ合っても、少しも嬉しくありません。「あのこ」というのはその男性の子供なのかもしれませんが、ともかく、切ない心情が涙ぐましい一首です。
 「かたかた触れる」という表現は、いささかぎこちないですね。当たり前な表現に近づけましょう。「てのひら」を「温める」というのも考えてみればちょっと変ですし、第五句の字足らずも気になりますので、状況を推測しながら、下の句にも手を入れておきました。洗牌のような特殊な単語、読みの難しい言葉には、ルビを振っておくのが親切です。(石井辰彦)

{添削後}
洗牌(シーパイ)でこつこつ当たるきみの手はいつもはあの子の手を温める

◆いつものことながら、添削によって「散文」化してしまいました。
文中の下線は私が入れたものですが、どこか的を外していますね。

「「かたかた触れる」という表現は、いささかぎこちない」ですか?
この歌の情景は麻雀です。「かたかた」というのは牌がぶつかり合う音を表現し、その際の手の接触を表現するのに、ふさわしい表現だと、私は思います。

「「てのひら」を「温める」というのも考えてみればちょっと変」ですか?
「手を握る」という行為は「掌と掌が合わさる」行為ではないのですか?
温もりを感じ、温もりを伝えるのは「てのひら」でしょ?

「字足らずも気になります」というのはいつもの石井氏の主張。
声に出して読んでみてほしいのです。リズムが崩れますか?そんなことはないと思いますが。
初心の者は「型を大切にする」ことが大事だということなのでしょう。大家は自在に字数を操ってもいいのでしょう。
確かに「型」は大事なのでしょうが、歌が「芸事」ではなく、「芸術」であるならば、大切なのは型ではなく「なかみ」。
「なかみ」が型をあふれるのならば、それはそれでよいのだと思っています。
五行にわたって、リズムをもつ短詩でいいじゃないですか。

と、私は思うものです。
添削という行為は、常に平準化をもたらすのでしょうね。石井氏も辛い立場でしょう。でも敢えて異議を唱えます。
応募作がよい。

◆元旦の新聞に、朝日歌壇・俳壇の選者の方々の歌・句が掲載されました。

馬場あき子氏
   一番咲きの冬の情念まつかなる椿を剪りて年を祝はん
   破滅しさうな何かが胸の芯にあつて森が吐き出す無尽の木の葉

佐佐木幸綱氏
   走るとは傾くことだ 雨のなかをくぐるように行くわが「ゆりかもめ」
   寅どしの寅という字はつつしみの意味というつつしみつつ飲んでいる

金子兜太氏
   荒星(あらぼし)遊ぶ秩父連山戦さあるな

名だたる方々ですからね、何をどうやってもいいのでしょう。
「型」はどこへ行ったのでしょう?

1月7日に、角川俳句大賞を受ける相子さんが紹介されていました。
   北斎漫画ぽろぽろ人のこぼる秋
   阿修羅三面互ひ見えずよ寒の内

「型」は確かに大事です。でも、型がなかみを殺してはいけない。

◆EU大統領は「俳人」です。
「風はある残念ながら髪はない」EU大統領
 【ブリュッセル=尾関航也】俳句好きで知られる欧州連合(EU)のヘルマン・ファンロンパイ欧州理事会常任議長(EU大統領)(62)の句集を出版する構想が浮上している。
 ベルギー出身の詩人ジェルマン・ドローゲンブロート氏が発起人で、欧州と日本での俳壇デビューを本人に働きかけている。
 「髪に風 何年たっても風はある 残念ながら髪はない」(本紙訳) 
 「ハエが飛ぶ うなる 回る 部屋をさまよう 誰にも害は与えない」(同)
 ファンロンパイ氏の句は、独特の哀愁とユーモアを特徴とする。ベルギー首相在任中を含め約5年間にわたり個人ブログに作品を書きつづり、現在も毎月3句前後のペースで創作を続けている。
 昨年11月にEU大統領に選出された後は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで作品が紹介され、俳人としても脚光を浴びた。欧州では「ハイク・ヘルマン」の異名が定着しつつある。
 句集は原語のオランダ語に英訳や和訳を付け、日欧で売り出す計画だ。出版の打診に対し本人は未回答だが、ドローゲンブロート氏は「EU大統領のおかげで短詩という表現手法に関心が高まっている。世界中で詩歌愛好者を増やすチャンス」と意気込んでいる。
(2010年1月11日02時14分  読売新聞)

朝日新聞ではこう訳していました。
風に揺れる髪/数年たって風はまだ吹いている/しかしもはや髪はない悲しさよ
港を目指し/三つの波/今押し寄せた」と3国の結束を示す自作の俳句も詠んだそうです。

★さて、俳句とは何でしょう?短歌とは何でしょう?

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