カエデの実
子房の一部分が大きくなって翼になったものです。
今年はほんの2,3個しか結実しませんでしたが、それでも蕾から花へ、実へと観察できました。
初めのうち、翼は左右対称だったのですが、いつの間にか、片方の種だけが大きく成熟し、もう一方は小さくとまってしまいました。
左右対称のプロペラ状の翼で風を受けてくるくる回転しながら飛んで行くのが有名ですが、このように、片側だけが発達しても大丈夫です。
中央のところで二つに割れやすく、種一つと翼一枚のセットでもくるくるよく回転して風に乗ります。うまく風に乗れば遠く見えなくなるまで飛んでいってしまいます。
カエデを育てることの楽しみは、実はこのプロペラが飛んで行くのが好き、というのがあるんです、私の場合。
小学校の頃でしょうか、確か岩波の科学映画で「飛ぶ種」が幾つも紹介されていて、それを見てびっくりしたんですね。で、実物に目が行くようになった。そして、飛ぶ姿を自分の目で見て感動してしまった、というわけです。
見事な工夫です。
飛んで行った先が発芽・生育に適しているかどうかは分かりません。
むしろ、発芽できて生育できる種の方が少ないでしょう。大部分は無駄になります。
でも、常にそうやって可能性を探っているうちに、これまでは発芽生育できなかった環境が変化して生育できるようになるかもしれません。そのとき、人間はそれを見て「生育範囲を広げた」というわけです。
温暖化の影響で、昆虫や植物が北へ進んできた、というような言い方をしますが、その陰にはこういう活動がずっと続いているのです。
やあ、あったかくなったなぁ、じゃあ、北へいってみるか。ではないのです。
無駄とも見える生息環境拡大への努力が、時と所を得て成功するという結果なのです。
徒労への誠実。
生物はそうやって生きているのです。
むだだからやらない、などということは生物はしないものなのです。
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