百羽のカラス
2009.11.16付 朝日歌壇より
トラクター去りし夕暮れ静まりて百羽のカラス土を啄む:(徳島市)上田由美子
馬場あき子 評:索漠とした景が浮かぶ。いわば直接目にしない人にもありありと想像できる今日の現実なのだ。トラクターの掘り返した土はカラスの啄むにたる何を含んでいたろう。しかしそこに百羽のカラスは群がり啄むほかない。鳥の世界だけとも思えない切実さ。
「トラクターの掘り返した土はカラスの啄むにたる何を含んでいたろう」
それは、ほっ繰り返された土からはミミズやらネキリムシやらいろいろと出てくるわけですよ。
そのことをよく知っていて、カラスたちはトラクターの後を追い、畑仕事のおじさんの後ろについて歩くわけです。
しかたもなく、土をついばんでいるわけではないはずです。
評者はちょっと、「人間の事」に読み込み過ぎのように思えますが。
身も蓋もない言い方かもしれませんが、読み込み過ぎは興を削ぐ。
我が家の裏手にある、JRの土地に落葉が積もっていて、ふと気づくとザッザッと人が歩くような音がする。不審に思ってそっと眺めていると、鳩が落葉をひっくり返しながら進んでくるんですね。落葉の下に潜む虫を食べているわけです。
鳥はとっても頭がいい。ちゃんと餌の居場所を知っているのです。
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