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2009年11月25日 (水)

母性

2009.11.23付 朝日歌壇より
三億の子を産み捨てて湧き立たぬマンボウという母性悲しも:(東京都)野上卓
 馬場あき子 評:マンボウが三億の卵を煙のように産み落とす海中の映像に注目。生きにくい条件を数で越えようとする悲哀を思う。

私の理解ではマンボウの産卵は「悲し」でも「悲哀」でもありません。
生物が自分の卵にたいしてどのような関わり方ができるかによって、産卵数は変わります。
マンボウは魚類ですが、通常、魚類より下等と言われてしまうサメの中には、受精卵を体内で育てるための一種の「子宮」を創出したものがいます。
繁殖に関する戦略をどのようにつくるのか。それぞれの生物が長い時間をかけて自分たちなりの方法を確立してきた。その歴史を読み、心動かされることはあっても、そこに、産み捨てなければならない母性の悲哀を読むことはないのではなかろうか、と私は思っています。

ヒトのオスが一回に放出する精子は億の桁に達します。それがヒトという生物のあり方です。
それぞれの生物がそれぞれの生殖戦略をつくりだしてきました。
動物、植物をとわず、どのようにして種を保ち続けてきたか、どのようにして進化を続けてきたか、の生殖戦略をしっかり見定める、それが生きものを理解する第一歩でしょう。

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