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2009年11月19日 (木)

鏡で漆黒を作る(月の縦穴に関連して)

1110mirror12枚の鏡を角度を変えられるように張り合わせました。合わせ目から光が入り込んできては紛らわしいので、合わせ目の向こうは黒い紙を当ててあります。
この写真はおよそ90度。
ご存じかと思いますが、90度の鏡は「変」です。
写っているカメラのグリップは右手用です。それがあたかも向こう側に実物がこちらを向いているかのように写っています。ふつうの鏡の「左右逆転感覚」が成立しません。
これ、入って行った光が完全にその向きで反対方向にかえって来るという性質の画像的な現れです。自転車や道路標識の反射板は、3枚の鏡を90度で組み合わせた構造になっていて、ヘッドライトなどで照らした側へ光を返すようになっているのです。アポロが月面に置いてきた反射鏡もこういう構造です。
1110mirror2
鏡の角度を小さくしました。
鏡の間が暗くなってきましたね。
鏡はとてもよく光を反射しますが、100%の反射ではありません。90何%かの反射率です。正確な数字ではありませんが、例えば反射率が90%としたら、10回反射すると、0.9の10乗ですから、0.35くらいになり、入射光の35%しかかえってこないことになります。暗くなりますねぇ。。
Vの字面で反射ながら入っていって、ある程度はかえってくるのですが暗くなってしまう。
1110mirror3
ほらもう、ほぼ真っ黒でしょ。

1110mirror4
角度が小さくて立たないので左手で支えています。

鏡で作る漆黒。です。

鏡で黒を作るというのは結構意外だと思いますがいかがでしたでしょうか。おたのしみいただけたでしょうか。

◆月面に「漆黒の丸」があったら、そこには光が返ってこないメカニズムがある、とそこから穴の解析が始まったのではないかという私の想像から連想した理科実験でした。

◆光をよく反射するもので黒がつくれるというのは、それなりに身近にもありますよ。

・昔、ある温泉で、牛乳風呂があるというので見に行きました。牛乳の香りはするのですが、湯は黒いんです。なぜかなぁ、と考えた末、これは脂肪球での反射によって光が水中に入って行ったまま出てこられなくなったのだ、と気づきました。
脂肪球がいっぱいあれば、反射によって光が水の中深くへ入っていくことが妨げられて、はね返されて白く見えます。牛乳の白ですね。
ところが、脂肪球が適度にまばらになってしまうと、こんどは脂肪球での反射によって光が水の中に入って行きっぱなしになってしまうのでした。

・炭酸ガス入浴剤というものがあります。大きな錠剤型で、浴槽に入れると、重曹とコハク酸の化学反応で二酸化炭素が発生し、たくさんの泡ができます。
泡がたくさん発生している時は湯が白く見えます。泡による反射で光がかえって来るからです。
ところが、泡の発生の終わりごろ、泡はごく細かくなり、まばらになります。すると、短時間ですが、湯が真っ黒に見える時間帯があるはずです。え、まっくろだ、と思っていると、すぐその黒さは解消していきますけれど。
これは泡の反射で、光が湯の中へ入っていってかえってこなくなったからです。

・秋も深まって、虫たちが体温を上げるために日向ぼっこをするようになります。
チョウの中には太陽を背にして翅をV字型に狭く開いてとまっているものがあります。
上の一連の写真で、鏡をチョウの翅と思ってください。最後の写真で、鏡の間が黒くなってしまったということは、入って行った光が、鏡を合わせた空間内に吸収されたということですね。翅を半開きにして太陽光を受けると、入射した太陽光のエネルギーが効率よく吸収できて体温を上げるのに役立つということです。
翅を広げた方が受光面積が増えるような気がしますが、チョウの翅には体液は流れていませんから、翅が温まっても体は温まらないのです。翅を反射板として、鏡として使って、太陽エネルギーを体に集中させるのが効率の良い方法なのですね。

鏡2枚で実験できます。やってみてください。

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