衣更
2009.11.8付 朝日俳壇より
新しき鈴鳴る猫の衣更:(周南市)田中和女
長谷川櫂 評:首の鈴をとりかえることが猫の衣更。涼しげに響く。夏の句なれど。
窮屈なことですねぇ。この窮屈さが私の批判の的なんですが。
現在の季語では「更衣」は「初夏」なんですよね。
「季語と歳時記」というサイトから引用しますと
江戸時代、四月一日と書いて「わたぬき」と読んだ。この日に綿入れを脱いだからだという。今では冬から春に着用していた衣を夏物に替えることをいう。
で、更衣が初夏の季語だから評者は「夏の句なれど」と書き、夏への更衣だから「涼しげに響く」と書くわけですね。
違うでしょ。
論理的に言って、少なくとも年に2回「更衣」がなければならないのです。っ。
秋冬物への更衣なくして、初夏の更衣はあり得ません!
ここでの「更衣」は秋冬物への更衣です。っ。
ころも‐がえ【衣更え・更衣】 ガヘ
①衣服を着かえること。源氏物語葵「にび色の直衣ノウシ・指貫、薄らかに―して」
②季節の変化に応じて衣服を着かえること。平安時代の公家は、4月に薄衣(袷アワセ)、5月に捻り襲ガサネ、6月に単襲ヒトエガサネ、8月1日から15日まで捻り襲、8月16日から9月8日まで生織の衣、9月9日より生織の衣の綿入れ、10月から3月まで練絹ネリギヌの綿入れを着用。江戸時代では4月1日、10月1日をもって春夏の衣をかえる日とした。<季語:夏> 。源氏物語明石「四月になりぬ。―の御さうぞく」
③外観やおもむきを変えること。「―した商店街」
④男女が互いに衣服を交換し、共寝したこと。催馬楽、更衣「―せむやさきむだちや我が衣キヌは野原篠
原」[広辞苑第五版]
ほら、「4月1日、10月1日をもって春夏の衣をかえる日とした」というのがあるでしょ。
季語もそれに対応しなくっちゃ。こんなことやってると、「俳句が死ぬ」羽目になりますよ。もっと自在に、楽しくいきませんか?
それが「俳味」というものだと私は思うんですけれどね。
夏物をしまって、秋冬物を出して、防虫剤臭さを抜いて、などとやっていたら、顔なじみの猫が新しい鈴をつけてもらって顔を見せた。あらまぁ、あなたもころもがえしたのね。いいわねぇ。秋物の鈴だわねぇ。猫ちゃんは暖かい場所探しが得意だものね、鈴の音が温もりを運んでくれるわよねぇ。などと、猫と会話していらっしゃるのではないかなぁ。
季語を否定はしません。でも、季語に縛られてはいけません。
詩は心の表出なんですから。便利な道具を使うのはいいけれど、道具にもてあそばれないようにご用心遊ばせ。
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