金箔
理科教育関連の雑誌に、金箔を透かして見ると何色に見えるでしょう?というような問題が出ていました。これはもう、百聞は一見に如かず。見るっきゃない。
◆20年以上も前でしょうか、日本画の画材屋で純金箔を見つけて私費で買って教材として使ってきました。
透明なアクリル板に挟んで周囲をセロテープで固定し封をして、生徒に見せたものです。
化学の授業としては、金属の性質の授業で教室へ持ち込みます。電気を良く通す、熱を良く伝える、展性・延性がある、金属光沢がある。こんな性質を、自由電子との関連で説明するわけですが・・・。
金は特に電気伝導度も高いし、何より展性・延性に優れていて昔から金箔として使われ、金閣寺なども有名です。
金閣寺の金箔の張り直しの際に、金箔ブームが起こって、金箔で包んだおにぎりとか、金ぱく入りのお酒や飴など、いろいろ便乗商品が売れましたっけね。
金ぱく入りの飴を持っています。これも生徒に見せると喜びます。
先生!金箔って食べても大丈夫なの?
大丈夫、全く消化吸収されずに、うんちと一緒に出ていくよ。
なんだぁ。
先生!金ぱく入りのせっけんって効き目あるの?
効き目、全くゼロ。全然溶けないからね。
なんだぁ。
さて、冒頭の話ですが、その雑誌あてに、使っていいですよ、と写真を添付してメールを送りました。その写真とは微妙に違う奴をここでお目にかけましょう。
これは床にひっくり返って、天井の蛍光灯を写した写真。何の変哲もありません。
では、カメラのレンズの前に金箔をかざして撮ると・・・
こうなります。
青いでしょ。
金箔は光が透けるということ自体あまり知られていませんね。
さらに、色が変わるとなると、話に聞いたことがあっても実際に見たことのある方は少ないでしょう。
金箔は厚さが0.0001mmといいます。金原子が厚さ方向に1000の桁くらいの個数が並んでいるといってよいでしょう。
光が透けるくらいなんですね。
で、薄くっても、反射光は黄色。すると、白色光のうち黄色が抜けた色が透過します。
これ「黄色の補色」っていうんですよね。
つまり、青なんです。
◆ところで別件。画材屋では、純金箔とならんで、「洋金箔」というものを売っていました。
値段が一ケタ安いのです。色や輝きは純金箔と同じ。当時はインターネットなんて存在しない時代。検索もありはしない。「洋金箔」とはなんだろう?と分からなかったのです。
で、授業に、金箔と一緒に持っていって、今のところどういうものか分からないんだが、洋金箔というものもあったよ、で、こいつは光がほとんど透けないし青くはならないんだ、と話しました。
そうしたら、お父さんが貴金属宝飾店を経営なさっているというお嬢さんがいましてね、答えを聞いてきてくれたのです。
洋金箔とは真鍮の箔です。
純金箔よりずっと丈夫なので、装飾品に貼って金箔のように見せたり、あるいは、絵や工芸品に金箔を貼る際の下地に使うと丈夫になる、ということでした。
で、翌年から、純金箔に加えて、洋金箔+5円玉が教材になったのでした。生徒と作る授業です。
蛍光灯は、「透過光ですから青く」見え、周囲は「反射光ですから黄色く」見えます。
薄い箔にする過程で微小な穴がいっぱい開いたのだと思います。
蛍光灯がうっすらと白色光のまま透けて見え、周囲は真鍮の反射光で黄色く見えます。
違いがお分かりいただけたかと思います。
いかがですか?物質の性質って面白いですね。だから化学は楽しいのです。
もののことは、ものにきけ。
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