ぬかご
2009.10.12付 朝日俳壇より
近づきし指へ零余子(ぬかご)のこぼれけり:(東かがわ市)桑島正樹
稲畑汀子 評:自然薯の蔓に出来るぬかごは触れると忽ち蔓から落ちてしまう。指が近づいただけで零れるとはぬかごならではの表現である。炊き込んだぬかご飯は鄙びた味で好まれる。
私は「むかご」という読みしか知りませんでした。多分、「むかご」のほうがポピュラーなのではないかと思います。
ただ、「零」という字のことは考えたことがありませんでした。
こぼ・れる【零れる・溢れる】自下一 こぼ・る(下二)
①水・涙などがあふれ出る。また、粒状・粉状のものが外にもれて出る。伊勢物語「その石の上に走りかかる水は、小柑子・栗の大きさにて―・れ落つ」。源氏物語帚木「忍ぶれど涙―・れぬれば」。「砂糖が―・れる」
②花や葉などが落ちる。散る。枕草子199「風のいとさわがしく吹きて、黄なる葉どものほろほろと―・れ落つる、いとあはれなり」
③物があり余って外に出る。はみ出す。源氏物語初音「いづれもいづれも劣らぬ袖口ども、―・れいでたるこちたさ」
④すき間などから漏れ出る。宇津保物語藤原君「花ざかりにほひ―・るる木がくれもなほ鶯はなくなくぞ見る」。源氏物語蛍「つやも色も―・るばかりなる御衣に」。「グローブから球が―・れる」「雲間から日光が―・れる」
⑤気質などが表情にあらわれる。あふれる。源氏物語紅葉賀「添ひ臥し給へる様、美しうらうたげなり、愛敬アイギヨウ―・るるやうにて」。「思わず笑みが―・れた」[広辞苑第五版]
「こぼれる」という読みには全く思いいたっていませんでした。そうだったのかぁ。
「こぼれあまるもの」ねぇ。知らなかった。
えいよう‐せいしょく【栄養生殖】栄養器官の一部が分離発育して、独立の1個体となる生殖の形式をいう。広義には無性生殖に同じだが、特に高等植物で、むかご・鱗茎・塊根、また人為的な挿木・接木などによる生殖をいう。これによって生じた個体はクローンである。栄養繁殖。栄養体生殖。[広辞苑第五版]
イチゴやユキノシタのランナー(走出枝)やトクサなどの地下茎、ヤマユリの鱗茎、ジャガイモの塊茎なども「栄養生殖」の例ですね。
こういう親の一部が独立の別個体になる場合、遺伝的には全く同じものですから「クローン」なのです。現在、クローンというと何だかおっかないもののように思っておられる方もいますが、もともと、接ぎ木の小枝という意味なんです。植物では、クローンという出来事は一般的ですね。
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