赤い水平線
朝日新聞の報道動画です。
「水平線だけが明るい帯になる」とあります。
「水平線は赤く染まった」というキャプションがついた写真です。
さて、太平洋上の船の上から眺めて、頭上が真っ暗な時に、なぜ360度全周の水平線が赤く染まるのでしょう?
船の上の人は頭上に半径100kmの黒い傘をさしている、と考えてください。その傘の中で日食が見えています。
ところが、傘の覆いの先は明るいのですね。濃い半影部分から明るい半影部分へ、その先は全くの昼。
その明るいところからの光が、水平線ギリギリの低い角度で走ってきて船の上の人の目に入る。
これって、夕方の夕焼けと同じですね。水平線のこちら側はもう暗くなってきているのに、水平線の向こうの太陽からの光が低い角度でさしてくると、夕焼けになります。
昼間の青空、太陽光が空気で散乱されて生じるのですが、波長の短い青い光が散乱されやすいのです。赤い光は散乱されにくく、遠くまで届きます。
低い角度の光は長い距離を通ってきますので、白色光のうち、青い光は散乱で失われ、赤い光が届いてくるのです。ですから、「夕焼け」は赤いのです。
日食のときも同じこと。月の影の傘の外からの光が長い距離を進んで赤い光が届くのです。しかも、月の影の丸い傘の全周が同じ状況ですから、360度、見わたすかぎり水平線が明るく赤くなるのです。
◆水平線って自分の位置からどのくらい先なんでしょう?
図の中に式を書き込みましたので読んでください。ピタゴラスの定理を使っているだけです。
おおざっぱな話ですので、近似を使っています。
地球の半径 r=6378kmを入れると
高さ h kmの位置から見る水平線までの距離xは
x=113×√(h)
となります。
h=1km(1000m) x=113km
h=0.1km(100m) x=36km
h=0.01km(10m) x=11.3km
h=0.02km(20m) x=16km
h=0.001km(1m) x=3.6km
h=0.002km(2m) x=5.1km
海岸に立つ身長2mの人が見る水平線は海岸から5kmくらい先なんですね。
大型の船の上が例えば海面から20mあったとしますと、水平線は16km先です。
半径100kmの傘の下ですから、光源は水平線の向こうにあるわけで、まさしく夕焼けを見るのと似た条件なのですね。
◆今回の日食に関してお話したいことはほぼ尽くしたと思います。
もしまた何か思い出したら、その時書きますね。
授業でも、こんな雰囲気だったんですよ。本来の授業から脱線して日食の授業を1hくらいやるんですね。
プリントを2,3枚作っていって、詳しく知りたい人はプリントをきちんと読めばちゃんと理解できるようにして、授業では、要点をかいつまんで話すわけです。
こんなことばっかりやってましたからね、同じ授業ができるわけがない。
やれ日食だ、やれ雪が降った、やれ雷が鳴る、やれ青空って何だ、やれ誰かがあくびした、猿にはあくびがうつるか、・・・・
その日その時、授業はライブ。
同じ授業は2度とできないんです。一回っきりのものなんです。
授業って生徒と教師が共同で作る「創作物」なんです。
授業って、始まりから終わりへ向かって、誕生し成長し終焉する「生き物」なんです。
授業を殺さないでください。
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天文月報 11月号に福江純氏のエッセイ風の論文が載っています。主旨は同じですね。
投稿: Astro-Grand-Pa | 2009年10月26日 (月) 17時15分
天文現象は好きなんですが、自分で観測に歩き回ることのできない身で、理屈をこねております。
お名前から察するに、天文ファンでいらっしゃるようですね。2012年の金環食を晴天下で観測したいものです。
投稿: かかし | 2009年10月27日 (火) 16時28分