仔を産む
2009.6.29日付 朝日歌壇より
三方の見通しの利く場に羊歯を敷き用心深く猪(しし)は仔を産む:(四万十市)島村宣暢
馬場あき子 評:猪のお産、猛々しい猪に似合わぬ細心の優しさは、やはり母の愛なのだ。
「猛々しい猪」というのは、失礼な表現です。馬場氏には申し訳ないけれど。
ひろく構えて世界を見ませんか?哺乳類というのは、みんな同じようなものなんです。人間と大差ないんです。人間は哺乳類の動物なんです。
人間は、子を産むにあたって、やはり細心の心配りをしますね。なら、イノシシも同じ、猫も、犬も、虎も、ゾウも、ネズミも・・・みんな同じ。
イノシシは1回に平均で4~5頭の子を産むそうです。妊娠期間は120日前後で、条件さえ良ければ春と秋の年2回出産する場合もあるといいます。でも、その半数以上のイノシシが生後1年未満で死亡してしまうといいます。平均寿命は10年程度です。
強くて猛々しくて繁殖力が大きくて、どんどん増える、のかというと、そんなことはない。種を維持するということは大変なことなのです。
とても警戒心の強い動物です。臆病で環境の変化に敏感です。
そして、哺乳類ですから「考え」ます。工夫して、子を大事に育てたいのです。
歌の作者島村氏は、イノシシの産褥をみてしまったのでしょうか。
野生の哺乳類で一番危険なのは、子育て中の母親です。命を投げうってでも子を守ろうとします。
そっとしておいてあげてくださいね。イノシシのためにも、そして近づいてしまった人間のためにも。
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