灯取虫
2009.6.22付 朝日俳壇より
灯取虫もの書く人を好みけり:(京都市)飯村弘
「灯取虫」というのは夏の季語だそうです。
ひとり‐むし【火取虫】火に集まる虫。灯蛾。<季語:夏>[広辞苑第五版]
ただなぁ、6月の新聞紙上に載った句ということは、6月の初め、よりは前の句ですよね。夏でいいけれど、窓を開けて物を書いていたら虫が飛びこんで来た、というにはちょっとまだ「暑さ」が不足しているような気がして。
いや、ごめんなさい。そういうこともあったのでしょう。
季語を無視すれば「灯取虫もの読む人を好みけり」として、読書の秋に部屋へ飛び込んでくる虫でもいいと、私は反抗心を燃やしてしまうんですね。で、季語にとらわれるな、と大学の頃にも俳句ゼミの先生と論争してきたのでした。
季語は便利です。短詩にとって非常に便利な道具です。でも、道具にとらわれてはいけないのではないか、俳句の本質は声にして読むときの、このリズムにある、と思うものです。
◆「アメリカシロヒトリ」というガがいます。「アメリカ白灯取」ですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AC
ウィキペディアから引用します。
ヒトリガ(火取蛾、燈取蛾、灯取蛾、火盗蛾、灯盗蛾) Arctia caja はチョウ目ヒトリガ科に属すガの一種である。
このヒトリガに限らず、昆虫は光源を見込む角度を一定にして飛ぶという習性があります。
おそらく、夜、月を見込む角度を一定に保っていれば、水平に飛べるということなのではないでしょうか。いくら飛んだって、月は天体、見込む角度は変化しませんので水平に飛べます。ところが、火を見てしまって、それを見込む角度が一定になるように飛ぶと、螺旋を描いて火に飛び込んでしまうのです。
「飛んで火に入る夏の虫」ということになってしまうわけです。
私のこのブログで、虫がたどる軌跡のシミュレーションをしたことがあります
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_9af9.html
「等角ラセン」という記事です。よろしければお読みください。
また、速水御舟の「炎舞」という、炎に舞いこむ蛾の日本画があります。山種美術館にあります。
http://www.yamatane-museum.or.jp/
ここから、「コレクション」に入り、「作品紹介」へ入ってください。
所蔵の絵が見られます。その中に「炎舞」もあります。
山種美術館は今年の秋、新しくなってオープンします。秋には展覧会もありますので、どうぞ。
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コメント
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火取虫、初めて知りました。そして夏の季語なのですね。子供の頃、自転車の荷台に乗せられて真っ暗な田圃道を走っていたのですが、なんの為だったのか分かりません(母も覚えていないそうです)。昭和30年前後なので街灯など一本もなく本当に真っ暗な中、誘蛾灯(字は?)の灯りだけが明るくて虫がたくさん集まって飛んでいたのをはっきり覚えています。綺麗でした・・。
「炎舞」、素晴らしいですね。機会があったら見たいです。
投稿: 桔梗 | 2009年6月26日 (金) 06時44分
昔の夜は暗かったです。ですから、灯りに対する虫の行動も際立っていました。最近では、終夜営業のコンビニに虫が集まるようですね。
とある高校でのエピソード。桜の花も終わり、葉が茂り、「毛虫」が発生。事務室で、警告の立て看板を出しました。「アメリカヒロシトリが発生しています。注意してください」と。
生物の授業にいった私、授業の枕にさっそく、「アメリカからヒロシ君を誘拐に来たらしい。ヒロシ君がいたら気をつけるように。」
で、10分くらいアメリカシロヒトリについて蘊蓄を傾けてから授業に入ったのでした。実話です。
投稿: かかし | 2009年6月29日 (月) 14時01分