蜘蛛の子
2009.6.8付 朝日俳壇より
蜘蛛の子の初めて縋る己が糸:(東かがわ市)桑島正樹
大串章 評:蜘蛛の子が、初めて自分の吐いた糸に縋(すが)っている。その初体験を、蜘蛛の子は意識しているのかどうか。ふと人生の一こまを思わせる。
{この句は長谷川櫂氏も選んでおられます}
若干の思い違いが入っているような、あるいは、思い違いを誘発しそうな、そういう感じがします。
「吐く」というのは普通「口から」です。カイコは「糸を口からはきます」。正確には口の下にある吐糸腺から糸を引きだし、頭を振りながら繭を作っていきます。
クモの場合は、普通、腹部の後ろの方にある「出糸突起」から糸を出します。
尻から糸を出しそれにぶら下がったり、尻から出した糸をうまく脚でコントロールして網を張ったり獲物をくるんだり。
クモの子が高いところに登って、尻から糸を出して風を受け空を飛ぶ、なんていうのもありますね。
細い糸ですが、体重の2倍の力が加わっても切れません。子グモの場合だと、体重比ではもっと強い糸ということになります。
「その初体験を、蜘蛛の子は意識して」いません。糸を使うことはクモにとって足で歩くことと同じことです。ごく当たり前の行動です。
どうも、無味乾燥でいけませんね。ただ、私のような人間には、蜘蛛の子が初めて自分の糸にぶら下がっている、ということに思い入れするよりも、安全係数の非常に大きな糸であること、自由にその糸をコントロールして行動できること、そういうことの方が驚きであり心を揺さぶることなものですから。
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