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2009年6月 3日 (水)

別れ際

[恋する大人の短歌教室](2009/6/1)
{応募作}これからも頑張れなんて別れ際きみなしでどう頑張れるのか:神奈川 中原かおり

 失恋の歌ですね。一方的に別れを告げられた若い女性の、途方に暮れた様子。相手の暢気な口ぶりを恨めしく思う気持ちが、よく出ています。「頑張れ」などという言葉が違和感なく日常的に使われるような、友達付き合いの気分もある恋愛だったのでしょうが、いざ別れるとなると、そう簡単には思い切れるものではないのでしょう。未練がましい雰囲気が、読者には微笑ましく感ぜられる一首です。
 ただ、何となく舌足らずな短歌であることも確か。「別れ際」という言葉が、五七五七七の定型に音数を整えるため強引にこの位置に投げ込まれているようで、どうもぎごちない。語順を変え、助詞も加えてみました。「頑張れ」という言葉が第二句と第三句に跨り、一種の破調になりますが、この方が韻律に多声音楽的(ポリフォニック)な重層性が生じ、現代の短歌らしくなるのではないでしょうか。作者の内心の苦しいつぶやきを際立たせるため、一字空きも使ってみましたが、こちらはお好みでどうぞ。(石井辰彦)

{添削}別れ際にこれからも頑張れなんて きみなしでどう頑張れるのか

まぁ、受け入れます。ただ、原作が定型だと字余りをわざわざ作り、前に一字空けが多いとなくしたのに、なければ入れ、破調をわざわざつくる、というのも、添削って、自在といえば自在、なかなかに理解が届きません。

私なら、

これからも頑張れなんて 別れ際 きみなしでどう頑張れるのか

こうかな。別れを告げる話の本体部分はおそらくもう終わっています。そうして、本当に「別れ際」の一瞬に「おれ、いなくても、きみならがんばれる」というように放たれた言葉。「そんなあ」という一人のかなしみ。

「別れ際」という文字の前の部分はかろうじて二人がいる状態を示していて、この文字の後ろの部分には作者一人しかいない。文字の並びとしての歌を、時間表現にするために、「別れ際」の両側に一字空けを入れてみました。

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