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2009年4月 1日 (水)

ホームレス

2009.3.30付 朝日歌壇より
囚人の己れが<(ホームレス)公田>想いつつ食むHOTMEALを:(アメリカ)郷隼人
 高野公彦 評:ホームレスの生活の厳しさを思い浮かべ、ぬくぬくとホットミール(注に「温食」とある)を食べている自らを責める歌。
 永田和宏 評:遠くアメリカからそれを思いやる郷氏は、自らは温食を取れることに申し訳なさも感じている。
 馬場あき子 評:アメリカで服役中の郷さんが、囚人には三食がついていることを内省しながらホームレスの公田さんにあてた贈歌のようだ。まだ温かな食事が身にしみる季節である。

温かき缶コーヒーを抱きて寝て覚めれば冷えしコーヒー啜る:(ホームレス)公田耕一
 {高野公彦、永田和宏 選}
 永田和宏 評:温かい食べ物は心を安らかにしてくれるが、まず暖を取るため抱いて寝なければならない生活の厳しさ。

郷隼人氏はアメリカで終身刑の身です。身の上からあまり私としては取り上げずに来ましたが、朝日歌壇では常連です。
郷氏はアメリカの刑務所で朝日新聞も読んでおられるのですね。
で、太平洋をはさんで、歌が響き合ったようです。
刑務所内の方が三食付きで暖かいという現実。日本でも、金もなくなって、捕まった方が食いはぐれがないという犯罪が起き始めています。なんという皮肉な現実。
社会構造がきしんでいませんか?

歌壇俳壇欄の下隅に、こんな記事が載っていました。(無記名です。)

    海を越えてはるかに思う
  本日の朝日歌壇、高野、永田選歌欄に対をなすかのような作品が並んだ。郷隼人さんが給食の温かさに、アメリカの獄からホームレスの公田さんを思いやる。かたや公田さんの歌は、缶コーヒーで暖をとる春まだ浅い日の切ない眠りを伝えている。互いに見ず知らずの投稿者が、それぞれに発信した歌と歌が、図らずも相聞に似た関係を生じたかっこう。呼び合う詩形としての短歌の面目躍如だ。

「面目躍如」という言葉遣いにはちょっと抵抗を感じます。嬉しい話ではなし、傷をかきむしるような思いをさせられるし。
 ただ、このようなことは俳句では起こらないのだろう、とは思います。私の個人的な思いとしては、俳句もこのような人事を扱うことができればいいのになぁ、自然だ、写生だといっていては、俳句は「人の事」から離れてしまいますよ、と。

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