火葬
2009.3.30付 朝日歌壇より
目を開けて息子見つめつ亡き母を炎(ひ)がつつみゆくインドの火葬:(堺市)坂本真由美
老いるまで生きることなし実験のまるきねずみら乳吸いており:(堺市)坂本真由美
作者はどのような方なのだろうか、と考えこみます。動物実験に使われるマウスにかかわりがある人。生きること、死ぬことに深くかかわりのある人。
二つの歌を並べて、交互に読んでいます。それぞれに何か言えないことはないけれど、二つ合わせると、言葉が出にくくなります。
◆別件:こんな短い記事がありました。
[特派員メモ]バラナシ(インド):菜食への道(2009/3/19 朝日新聞)
インド北部バラナシ。ガンジス川のほとりでは毎日、火葬が行われている。組み上げた薪のうえで遺体を焼く。囲うものが何もないから、訪れた人は一部始終を目のあたりにすることになる。
取材で初めて訪れて1週間になるが、肉がのどを通らない。帰宅するなり、妻が出してくれた夕食のサラダに添えられたベーコン。思わず目を背けた。焦げ目がいけなかった。大好物の豚汁もだめだ。
思い出したのは、いま話題の映画「おくりびと」。本木雅弘さん演じる納棺師が妻の持ってきた鶏肉をみて吐き気をもよおす。仕事で接する遺体の姿と重なって、食べられなくなってしまうのだ。映画ではその後、ふぐの白子を食する場面が出てくる。人は食わなきゃ生きられない、どうせ食べるならうまい方がよい――そんな言葉に諭されて。
だが、菜食主義者の多いインドには、こんな境地に至らずとも、生きていく道がある。レストランには必ず菜食主義者用のメニューがあり、これがまた、結構うまいのだ。スパイスのきいた豆やチーズの味は素晴らしく、そのうえ消化にもよい。
妻は「作るものがなくなった」としきりに嘆くが、太り気味の身にはちょうどよいショック療法、か。
◆父が手術を受けた後、医師からの説明を母と一緒に受けました。切り取った腸を見せながらの説明でした。後で、母がぽつりと。「鶏肉と変わりないのね。」と。
鳥を解体することは母にとってはなじみのことです。私も子供のころ鳥の解体をよく見ていました。すごい眼をした人なんだなぁ、と、母親ながらに思いました。
別に、肉が食べられなくなったという話はありませんでした。
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