こも巻き
2009.3.30付 朝日歌壇より
毛越寺浄土庭園松に巻くこもを外せり今日の啓蟄:(盛岡市)鈴木充
佐佐木幸綱 評:東北・北海道にもそろそろ春がやってくる。岩手県平泉の毛越寺には、浄土庭園と呼ばれる池のある大きな庭園がある。
毛越寺はよく知っています。で、この歌を取り上げたのは、「こもまき」というものに以前から疑問を抱いていたからなのです。あの「こも」に、害虫が入って冬ごもりをする、というのはおそらくウソだよなぁ、と。
それなら、むしろ、根の周りに落ち葉を積んでやったほうが、むしろ冬越し環境としてはいいはずじゃないのかなぁ、と。
改めて検索してみました。ウィキペディアを引用します。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%82%82%E5%B7%BB%E3%81%8D
こも巻き(こもまき、菰巻き)は、江戸時代から大名庭園で行われてきたとされる害虫駆除法で、マツカレハの幼虫(マツケムシ)を除去する方法のひとつ。マツカレハの中齢幼虫は、冬になると、地上に降り、枯れ葉の中などで越冬する習性を持つ。このため、11月頃、マツやヒマラヤスギの幹の地上2mほどの高さに、わらでできた「こも」を巻きつける。 春先に、この「こも」の中で越冬したマツカレハの幼虫を「こも」ともども焼却しマツカレハの駆除をする。 施術の時期的に冬支度のように解釈する向きもあるが、決して防寒目的ではない。
ただし、マツカレハの天敵となるヤニサシガメなども越冬場所が共通していることが多く、共々に燃やされてしまうこととなる。
この駆除法の効果と問題点を比較検証した研究で新しいものとしては兵庫県立大学環境人間学部の新穂千賀子らが2002年から5年間かけて姫路城で行った調査があり、これによればこも巻きに捕まったマツカレハはわずかであり、対して害虫の天敵となるクモやヤニサシガメが大多数を占め、害虫駆除の効果はほとんど無くむしろ逆効果であることを証明した。
もっともこの研究以前から天敵や設置方法への配慮が必要との声は古くから上がっており、天敵の捕殺の程度を検証し、害虫を効果的に選択するための研究も行われている。 そのため、皇居外苑や京都御苑では既に20年以上前から行われておらず浜松市も2007年から中止している。
こんな新聞記事もあります。(私の個人データベースから)
マツの「こも巻き」効果に?、捕まるのは益虫ばかり
マツの幹にこもを巻く姫路城管理事務所の職員(昨年11月8日) 冬の間、マツの害虫駆除のために行われる「こも巻き」は、クモなどの益虫を大量に捕獲する一方、枯死の原因となる害虫にほとんど効果がないことが、兵庫県立大の新穂(にいほ)千賀子准教授(昆虫生態学)らの調査でわかった。
姫路城(兵庫県姫路市)で4年間に捕まったのは益虫55%に対し、害虫はわずか4%。逆効果にもなりかねず、今後の対策のあり方に一石を投じそうだ。
マツのこも巻きは、初冬にわらで編んだこもを幹に巻き付け、春先に外して焼く。暖かいこもに集まるマツカレハの幼虫などを一網打尽にできるとされる。
新穂准教授らは、姫路城で、外した直後のこも約350枚に、どのような虫がいるか2002年から05年まで調査した。
マツカレハ幼虫は02~04年は0~6匹、最多の05年でも44匹にとどまった。マツ枯れの最大の原因になるマツノザイセンチュウを媒介するカミキリはゼロだった。逆に、害虫を捕食するクモ類は毎年337~625匹、カメムシの一種のヤニサシガメも90~486匹確認された。
マツカレハ幼虫は、樹皮の裏側に多いという報告もあり、こもを外した幹の割れ目で見つかり、夏には多数のさなぎも見つかった。センチュウも幹の中に潜み、こも巻きでは退治できない。
マツのこも巻きは、江戸時代から大名庭園で行われていたと言われている。姫路城では1960年代から恒例行事になっている。しかし、効果が薄いという意見は以前からあり、マツの名所では、三保の松原(静岡市)や岡山後楽園(岡山市)で実施しているが、皇居外苑や京都御苑は20年以上前にやめた。浜松市は今季中止し、神奈川県平塚市も廃止を検討している。
新穂准教授は「こもは益虫に越冬場所を提供する面もあるので、続けるなら、益虫を逃がした後に焼く方法などを考えたほうがいい」と話す。
姫路城管理事務所は「確かにクモが目立ったが、益虫という認識はなく、ずっと焼却してきた。方法を検討したい」としている。
(2008年3月22日14時15分 読売新聞)
やっぱりねぇ。松を守りたいのなら、ちゃんと昆虫の生態を知ったうえでおやりになるのがよろしい。「感傷的」な「擬人化」をしてもダメですよ。
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