前の記事で、ツマグロオオヨコバイが腹端から出す「液体」を「おしっこ」といいました。
ヒトとのアナロジーでいえば、口から液体を吸って腸から吸収して、おしっことして排泄する、というイメージでの言葉です。
ですが、ツマグロオオヨコバイは、植物の薄い栄養液を大量に吸って、吸収できる養分を吸収した後の、余分な水分を腹端から排泄しているわけです。
左の図を見てください。稚拙な概念図です。
ヒトも昆虫も「管状」の生物です。口から肛門へ至る「パイプ」なんですね。
ここで大事なのは、消化管の中は、普通「お腹の中」といって、体内のように考えてしまいますが、実は消化管の内部は「体外」なのです。
生物は、「自己と非自己」を区別しますし、自己の内部と外部をきちっと仕切って厳密に区別します。外部のものを安易に内部に入れたら、自己が壊れます。ですから、単細胞動物だって、外部のエサを、小胞にくるんで内部に取り込み、そこへ消化液を注入して、細かくして吸収して、不要のものは外へ捨てます。この過程はあくまで「外部」で行われます。
多細胞の我々や昆虫だって同じ。易々と外部のものを内部に取り込んだりはしません。消化液を消化管内という外部環境に放出して、外部で消化し、細かくなった分子を内部に吸収するのです。
クモが消化液を餌の体内に注入して外部で消化して吸収するというと、なんだか原始的なやり方だと思う方もいらっしゃるでしょうが、原理的にはまったく同じこと。
消化は体外で行うものなのです。
そのようにして消化・吸収して、残ったものを捨てる。
これが「うんち」です。
それに対して、内部環境で生じた老廃物を濾しわけて、濃縮して、外部に捨てる。
これが「おしっこ」です。
ですから、ツマグロオオヨコバイが植物の栄養液を吸って残りを腹端からだすとき、これは「うんち」なんですね。液体ではあるけれど。
そんなところを、意識してください。(普段は私もあいまいに使います。区別した方がいい時はきちっとしましょう。)
ツマグロオオヨコバイだって「おしっこ」もするんですよ。ただ、そのおしっこは、外部環境である腸管のなかに排泄されますので、うんちもおしっこも、一緒になって出てくるのではありますが。
うんち、は、物を食べなければ出ません。腸管の壁が壊れて少量の便となってでることはありますが。
ところが、おしっこ、は、生きている限り排泄しなければなりません。生きるということは代謝活動をするのですから、老廃物が必ず生成するからです。
「みんなうんち」で、動物はみんなうんちをする、というのはとても大事な認識なのですが、生きていることの証、という意味では「おしっこ」の方が本質的かもしれません。
命の瀬戸際にある方について、導尿の袋をさして、おしっこが出なくなったら覚悟してください、というようなことを医者に言われます。それは、代謝活動の終わりを意味するからです。
◆コウガイビルのお話をした時に、あれは「袋状」の体だと言いました。
左の図がそのイメージです。
腸が体を貫いていないのです。
ですから、同じところから食物を取りうんちを出すことになります。
袋状という意味がお分かり頂けたでしょうか。
◆最近、コラーゲンやら、ヒアルロン酸を「食べる」というのがはやっていますが、あれはまったく無意味なことです。
コラーゲンやヒアルロン酸などの、大きな分子がそのまま体内に吸収されることはありません。また、自分が作ったものでないものを、そう易々と「体内」に取り込んだりはしません。
豚や牛の皮や骨を煮て取り出したようなコラーゲンを、そのまま体内に取り込んで、自分のコラーゲンの代わりに使ったら、その方の皮膚は「牛皮・豚皮」になってしまうではありませんか。
栄養学の基本を忘れてはいけません。
コラーゲンは消化されて、アミノ酸として吸収されるのです。年齢とともに、肌の張りがなくなったら、それはコラーゲン合成能力が低下したのですから、いくら原料だけとっても、合成できなくてコラーゲンは増えません。
コラーゲンは「糊」のようなものですから、お顔に塗れば、洗濯糊をつけた洗濯物のように、皺が伸びてパリッとするかもしれませんね。それは理解できることです。
コラーゲンも、ヒアルロン酸も、食べても何にもなりませんよ~。
ついでに、DNAを食べても、脳が活性化することは一切あり得ませんので、そう理解してください。