キブシ
3月30日付で「この木、なんですか?」という記事を書きました。
takao_bw さんからコメントを頂き「キブシ」ではないかということでした。
早速、検索してみたら、確かに、あの記事に載せた写真はキブシでした。
ありがとうございました。
改めて、もう一枚写真を掲載します。この姿は、一度見たら忘れられません。
き‐ぶし【木五倍子・木付子】キブシ科の落葉小高木。山地に生ずる。高さ2~3メートル。春、葉に先立って多数の黄色花を穂状に垂らす。果実を粉とし、付子フシの代用として黒色染料とする。材は杖・柄・楊枝などとする。マメブシ。漢名、通条花。[広辞苑第五版]
キブシ科キブシ属のキブシなのだそうです。学名は「Stachuurus praecox」です。
stachyus(穂)+oura(尾)
praecox:早期の
という意味だそうです。
http://www.ne.jp/asahi/osaka/100ju/kibusi.htm
ここからの引用です。
木の中には、一年のごく短い期間だけ私たちの目を強く引きつけるのに、その時期を過ぎてしまうと、一体どこに消えたのかと思うほど目立たなくなるものがあります。キブシもそんな木の一つといえるでしょう。
こんなことも書いてありまして、ナルホド、その目立っている最中に気づいたのですね。
道ばたや川ぞいの、やや荒れた、攪乱を受けやすい環境によく生えています。
とありました。確かに、六郷用水跡の水路近く、図書館の敷地の端っこで、あまり手入れされないところにありましたので、納得しました。
◆ところで、「キブシ」で検索をかけると、その一覧に「木五倍子」という文字がいっぱい。
あれぇ?五倍子って、あの「虫コブ」のことじゃなかったっけ?
上の引用したサイトでは
キブシという名前は、むかし、女性が歯を染めるのに、多量にタンニンを含むこの木の果実を乾燥させて粉にし、ヌルデ五倍子(ふし)の代用にしたためといわれています。
そうなのか、とまた納得。
化学屋としては、この五倍子にタンニンが含まれていて、鉄イオンとの反応で黒い不溶性の沈殿物を作ることはよく知っています。
ふし【付子・附子・五倍子】ヌルデの若芽・若葉などに生じた瘤状のチユウエイ。葉軸の翼に集まって生ずる。紡錘形で内部は空洞、皮壁は帯黄褐色の絨毛を被る。タンニン材として薬用・染織用・インク製造用に供する。昔はその粉を女性が歯を黒く染めるのに用いた。生五倍子。<季語:秋> 。[広辞苑第五版]
紅茶を濃く淹れておいて、蜂蜜を入れると、真っ黒になってしまうことがありますね。蜂蜜が悪いのではありません。蜂蜜に鉄分が含まれているのです。その鉄分と、紅茶のタンニンが反応して黒くなってしまうのです。
この反応を利用したのが「お歯黒」というわけです。
既婚女性がしたとか、その他いろいろのことがあったようですが、歯を真っ黒に染めていたあの風俗、あれに使ったのが「かね(鉄漿)」と五倍子(フシ)なのです。
「かね(鉄漿)」ってなんでしょう?ご飯をジャブジャブにして(麹も入れるのかな)発酵させます。すると、アルコールを通りすぎて酢(酢酸)ができてきます。ここに、鉄の板とか、釘とかを入れておくと、鉄がさびて酢酸と反応して、酢酸鉄ができます。水に溶けにくい褐色の酢酸鉄(Ⅲ)もできるでしょうが、鉄を入れっぱなしにしておけば、ほとんど色のない水溶性の酢酸鉄(Ⅱ)の方がたくさんできると思います。鉄からできた「水」ですので「鉄漿」なのですね。
これを歯に塗って、五倍子の粉末を擦りつければ、タンニンと鉄イオンが反応して真っ黒な不溶物になり、歯が黒く染めつくわけですね。結構緻密な膜になるようで、歯の健康、ということだけで見ると、虫歯になりにくかったりするようです。(この話は、明正高校で生活化学という講座をつくり、化粧品の化学なども取り上げましたので、その時に仕入れた知識です。)
★この五倍子の代わりに使ったというので「木五倍子=キブシ」なのでした。な~るほど、でした。
◆takao_bwさんのサイトにはカミキリなどの精細なすごい写真がいっぱいあります。よろしかったら遊びに行ってください。
http://insectk.web.fc2.com/
です。
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