青鷺
2009.3.23付 朝日歌壇より
上体を先ずは送りて青鷺は長き脚もて歩みを移す:(下関市)藤本雅子
独特の歩き方ですよね。なんであんな歩き方をするんでしょう?
ハトはどうですか?ハトの方が身近だし。思い出していただくと、同じタイプの歩き方をしていることに気づかれるでしょう。
人間は頭部が体とくっついていますので、体の移動と頭の移動は同時です。
では、人間の体が移動するとき、周囲の風景はどう見えるでしょう?
人間の場合、眼球をかなり自由に動かせますから、体が移動しているときも、視点を一定のところにとどめておいて、風景が流れないように見ていて、眼球の移動が限界に来た時に、急速な動きでまた、反対側へ視線を振り、そこで視点を固定して動く風景を追う、ということを繰り返しますね。自動車や、電車で外を見ている人の目を見ると、眼球が振れていますが、見ている本人は風景を固定して見ています。
鳥の場合、眼球が頭部に対して動かしにくいのですね。ですから、体と頭が同時に滑らかに移動していくと、眼球に映る外部の風景は、流れっ放しになってしまうのです。
そこで人間が、視線を固定しては急速に戻し、ということを眼球運動でやるところを、鳥は頭の動きでやっているのですね。
まず頭を急速に前へ送ってしまいます。この時風景は流れていますがそれは仕方ない。
で、その位置で頭を空間的に固定して=風景も固定されて、体だけを前に移動させます。
体の移動を終えたら、また急速に頭だけを前へ移動させて、固定します、そうして体を前へ移動させます……
体を移動させる時、風景が動いてしまっては不都合なので、あのような動きで外界を固定的に見ながら歩いているのですね。
納得していただけたでしょうか。
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