タンクローリー
「塩化第二鉄液」と表示されています。
正式には「塩化鉄(Ⅲ)水溶液」といいます。
鉄イオンには+2のものと、+3のものがありますので、昔、それをそれぞれ「第一鉄」「第二鉄」と呼んだのです。現在の国際的な約束では、+2のイオンは「鉄(Ⅱ)」と表示し、+3のイオンは「鉄(Ⅲ)」と表示します。
さて、最大数量「10000L」、最大積載量「12130kg」と表示されています。
「L」はリットルのことです。「ℓ」は学校では使いますが、公式には小文字で「l」なんですね。そうすると、あまりにも「1」などと区別がつきにくいので、最近は大文字で「L」と書くことが普通になりました。
12130kg/10000L=1.213 kg/L=1.213 g/mL となります。
これがこの溶液の密度ですね。1.2くらいの数字でいいと思います。
さて、塩化鉄(Ⅲ)の水溶液って何に使うのだろう?
思い浮かぶのは、プリント配線での銅のエッチングですが。
工業的な用途を調べてみました。
凝集沈澱剤 : 下水終末処理、し尿処理、畜産廃水処理、食品工場・化学工場廃水処理、石油化学工場廃水処理など
硬化助剤 : 土建関係、グランド工事、ダム工事など
金属腐食剤 :ネームプレート・プリント配線板、グラビヤ印刷、写真製版、ICリードフレーム、シャドーマスクなど
その他 :触媒、顔料、医薬、農薬、媒染剤など
こんな感じですね。これなら、タンクローリーで大量に運んでいるのが理解できます。
美術で銅板のエッチングにも使いますね。
◆普通、高校で「イオン化傾向」というと
・・・Zn>Fe>・・・>(H)>Cu>Hg・・・
こう教わって、実験をやるとすれば
銅イオンの溶けた青い水溶液に、鉄片を入れると表面に黒っぽく銅が析出するとか、スチールウールを入れると、青い色(銅イオン)がすっかり消えて、スチールウールの表面はピンク(金属の銅)になる、というような実験になります。
ところが、高校ではほとんど教えないのですが、(eは電子を表すとして)
Fe(Ⅲ)+e = Fe(Ⅱ)
という変化で、三価の鉄イオンが電子を奪って2価の鉄イオンになろうとする力はかなり強いのです。
電子を失うことを酸化、電子を得ることを還元、といいますので、3価の鉄イオンは電子を相手から奪い取る「酸化剤」として働くのですね。
そこで、金属の銅に塩化鉄(Ⅲ)の水溶液を塗ると、塗ったところだけ銅がイオン化して溶けます。これを利用して、エッチングをするのですね。
◆タンクローリーを見て、化学の授業が一つ構成できました。
生徒実験か演示実験で、プリント基盤づくりをやっても良いかもしれません。
あるいは美術の先生に協力をお願いして、エッチングの製作もいいですね。
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