世界よ凍れ
2009.2.16付 朝日歌壇より
夜明けなど来なくてもいい薄明の美しさのまま世界よ凍れ:(岩手県)田浦将
ファウストの「時よ止まれ!」を思い起こさせます。
一応、ファウストは全部読み通したつもりですが、あまりの「息の長さ」に、こちらは息切れしました。あの、持続力って何なんだろう?
ファウストの「時」は、人間的なものだったと記憶します。私のカテゴリー分類では「人事」に属するものだったと思います。
上掲の歌は、むしろ「自然」に属するものですね。
私は薄暮から夜に至る時間帯が大好きで、母の実家のある、秋田県の八森の海岸で、沈みゆく夕陽を眺めることが至福の時間でした。海は西に開いていましたから、たっぷり楽しめました。
東の方は、白神山地の迫りくる高まりでしたので、薄明の方はさほどダイナミックじゃないんですね。
でも、「凍れ」「止まれ」とは思いませんでした。うつりゆくその変化こそが美しいと思っていました。
悪魔に魂を売り渡してもよいほどの、凍りつかせたいほどの美しい時、は想像を絶します。すべてはうつろいゆく。この宇宙さえもうつろいゆく。その事実に圧倒されます。
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