別離
2009.2.23付 朝日歌壇より
別離とはあっけないもの音たてて扉が閉まり互いに追わず:(熱海市)三澤房枝
永田和宏 評:死者との別れと取っておく。あっけないまでに事務的な別れはいっそうの悲しみを呼ぶ。
これは、永田さんに不同意です。死者との別れで「扉が閉まる」というのはどういう光景か、つかめません。
大寒の朝に逝きたる人ありて霊安室をあたためて待つ:(八戸市)山村陽一
山村さんは職業として葬祭をなさる方です。遺族の方は動転していますから、こんなことにはおそらく気づかれないでしょうが、深い心づかいがあるのですね。
と、「扉が閉まる」とは霊安室だろうか?
違うと思う。
抽象的に、生者と死者を仕切る「扉」が音を立てて閉まったのだろうか?
「互いに追わず」というのは、死者と生者の間ではちょっと分からないのです。
私は単純に、人と人の別れ、でいいのではないかと思うのです。おそらくは男女。
扉が閉まり、向こうにいる人の気配、存在感を感じながら、もう互いに相手を追うことはない、という切なさにも似た感情の噴出、だったのではないでしょうか。
« ごはんつぶあつまれ | トップページ | 出世 »
「崩彦俳歌倉」カテゴリの記事
- 榠樝(2021.02.01)
- オオスカシバ(2020.10.06)
- 猫毛雨(2020.04.20)
- 諏訪兼位先生を悼む(2020.03.25)
- ルビーロウカイガラムシ(2020.01.17)
« ごはんつぶあつまれ | トップページ | 出世 »
コメント