クラゲ
脳がなくて餌の時間を憶えぬとクラゲの飼育係は微笑む:(東京都)松本秀三郎
馬場あき子 評:言われてはじめて、クラゲを脳がない生物として認識しなおした。給餌の時間を憶えぬことも気楽で、のどかな嬉しさがある。
まあね。クラゲに脳はないですけど、神経系はあります。クラゲの体の動きは全体として統一がとれていますよね。神経系なしにはできないことです。
飼育下では周囲の環境変化が少ないですし水槽は狭いから、給餌の時間だからといって浮き上がってくるものではないでしょう。でも、自然界では日照の変化に応じてプランクトンたちは、浅いところ深いところと、日周行動をとります。当然クラゲだって、日周行動をとるはずです。
餌の時間は覚えなくても、エサを取るチャンスの高い行動はとれるはずです。でなきゃ、何億年も生きぬいてこられないでしょう。
脳がなければ何もできないわけではないのです。
プラナリアくらいになると、脳の芽生えができますね。私の好きな昆虫類は、微小ではありますが高性能の脳を持っています。私の主観では、昆虫にも、くつろぎとか緊張という、ある種の「精神状態」があるように思っています。
クラゲをひっくり返して固着生活にしたような「ヒドラ」という生物がいます。このヒドラについて、藤田恒夫さんという方が岩波新書の「腸は考える」という本で、こう書いておられます。
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ヒドラにはもちろん脳がない。・・・ヒドラのニューロンは腸のまわりに散らばって、突起の先でつながっているだけである。・・・口のまわりに、鉢巻をしたように、ニューロンの帯があり、ここではニューロンが密接しているという。これが脳への第一歩にちがいない。
動物がヒル、ミミズなどに進化するにつれて、腸のはじまり(食道)のまわりに、ニューロンの密集する神経節というものが現れ、大きくなってくる。この神経節が次第に、食道の上端より上の方に追加されていって、いちばん上部に大きなものがつくられる。これが脳である。
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「脳は腸からはじまった」と言うことができるだろう。
この本は、名著です。おもしろいですよ~。
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