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2009年1月15日 (木)

韃靼海峡

2009.1.12付 朝日歌壇より

韃靼の海峡渡りし蝶想う望み通りの地にてありしや:(舞鶴市)吉富憲治
 馬場あき子 評:「てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた」(安西冬衛)を念頭においた第一首。近年、蝶やトンボが北方を指して移動する生態が見られる。海を渡った蝶にはたして別天地はあったのか。人類の未来はどうなるのかまで、ふと一瞬心にとまる。

 評にあるように、「あの詩」を踏んでいるわけですが、あの詩、自体が「写生」の詩だとは全然思えません。間宮海峡でもタタール海峡でもなく、韃靼海峡だったのは、その「音」のせいでしょう。実際の蝶が飛んで行った情景ではなく、表象としての「ちょう」が、存在のその先へ一歩踏み出していったと、「この世」から、「この世ならざるところ」へ、一歩踏み出すとは、どういうことか、と。決して「あの世」とか「来世」とか「死後がどうのこうの」ではなく、この世の規範を振り棄てて、この世の外へ踏み出していったのでしょう、あのちょうは。

そして、そこはどうであったか、と吉富さんは尋ねておられる。

詩人や、歌手で、時折、この世ならざる世、を見てきてしまったのですね、と感じさせる方がいます。

私も、あのちょうに、ききたい。そこはどのような地でしたか?と。

◆馬場先生「近年、蝶やトンボが北方を指して移動する生態が見られる」とお書きになって、温暖化の影響のような感じを漂わせておられますが、それもちょっと違うなぁ。
このブログの2008年10月10日の記事「ウラナミシジミ(メス)」でその辺のことを書きました。
http://yamada-kuebiko.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-3ede.html

ウラナミシジミの「無効分散」という生態です。生まれて、ひたすら遠くを目指す。たまたま南へ行ったものもあるでしょう。生き残れます。たまたま北へ行ったものもあるでしょう。成虫は生き切れますが、繁殖できずに死にます。でも、ひょっとして、何かの偶然で繁殖できるかもしれません。環境の温暖化?それとも種の耐寒性獲得?決して温かくなったから北へ行こう、ではないのです。ランダムに、ひたすら生息範囲を広げようとするのです。
 この、生息範囲を広めていこうとする生物(動物も植物も)の力と、生物など歯牙にもかけない過酷な「なまの自然」との力のせめぎ合いが動的につり合ったところが「生息限界」になります。

何億年もそうやって、生物は、生の自然を生物的自然に変えてきたのです。人間の、射程の短い認識力では「無効」に見えても、実際、今の地球に広く生物が広がっているのは、この営みのおかげなのです。

「人類の未来はどうなるのか」これは深刻な問題です。現在、絶滅危惧種の最たるものは「ホモサピエンス」なのではないですか?地球はどうやったって壊れません。地球に優しくなんて、完全な嘘っぱち。ヒトが滅びても、生物の一部は必ず生き残って、ヒト抜きの、新たな世界をつくるでしょう。

 人類は絶滅を免れうるのか?これが喫緊の問題なのです。

韃靼海峡を渡って行った「てふてふ」なら答えの一部を知っているかもしれませんね。

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コメント

絶滅危惧種は「ホモサピエンス」ではないか?と言う先生のお話はちょっとショックでした。地球にやさしくとか、エコとかは自然を守る事だと考えていましたが、本当はヒトなのですね。人間の思い上がりですね。アメリカの女性科学者でしたっけ、音のない世界について本を書いていました。それはヒトもいないという事なのでしょうね。読んでいないので詳しくは知らないのですが・・。読むのは怖いです(--;

 初写真 末までと願う 笑顔かな

                お粗末でした(^^;

 

 レイチェル・カーソンの「沈黙の春(Silent Spring
)」ですね。予言的な本ですが、細部を詳しくつつき回すと、現在の知見からは問題のある個所もいっぱいあります。
 鳥の鳴かない春、の次にくるのは、聞く人のいない地球であることは確かなことです。
 石油の埋蔵量などあと100年もたないかも。人類は22世紀を迎えられるのか?それが最大の課題ではないでしょうか。今の生活を維持することはできません。どのような形で人類社会が残り得るのか?
 つけを後代に残したまま死んでいく私たちですが、少しは方策を考えておかなければ無責任ですよね。下手すると、孫あるいはひ孫の世代が危ない、という状況のように思えてなりません。

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