気持ちの長雨
2008.12.22付 朝日歌壇より
ある時はあなたの春で ある時は夏、秋、冬でありたし我は:(京都市)敷田八千代
高野公彦 評:「あなたの春」だけでない所がいい。作者は若き女性ながら、人生の機微を知る人なのだろう。
ただ一人を想う気持ちの長雨を終わらせたくて受話器置きたり:(京都市)敷田八千代
馬場あき子 評:一人を思う気持ちを「長雨」にたとえているのが巧みで、受話器を置く結句へのきっぱりした思いが生きる。
敷田さんの歌を読んでいると、老境に突入しかけの男である私が、若い女性の感性にひたって、その眼で光景を見ることができます。
詩という文学の持つ力であり、人が持つ想像力という力ですね。
私の想像力はかなり視覚的です。詩を読むと、その光景を頭の中に構築します。
大江健三郎さんからの孫引きですが、ルソーはエミールの中で「ひとり想像力のみが我々をして他人の苦しみを感じさせる。」といっているそうです。
他人の苦しみだけではないですね。喜びも悲しみもです。そう、人の春夏秋冬を感じ取れるのは想像力によってのみです。
私たちの脳の中には、他者の行動を見て、その行動を脳の中に再現する働きがあり、その再現された行動から、他者の心の状況を読み取る能力が備わっているのです。その力を十分に育てて、共感、という言葉を復活させたいですね。


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