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2008年11月 5日 (水)

鏡に映る時計

2008.11.3付 朝日歌壇より

鏡には時計が映らないことをわかつてはゐたはずなのですが:(花巻市)多田愛弓

私が実作者になれないことの理由がはっきりします。
鏡に時計が映る、ということを幾何光学的現象として真っ先に捉え、時計の針の回転が逆に見えるだけ、と「レポート」のような記述しか浮かんでこないからです。

時計の針の回転が逆回転にみえる、ということから、時間を巻き戻したい、できることなら過去のあの時へかえりたい、というところへは私自身は踏み込まない精神構造なんですね。

でも、理解はできます。ですから、ここに選んだのですし、ここに歌われていることの向こうに、きっと切ないことがあるんだな、と読み込むこともできます。

私の頭の中は散文なんですよね。

◆鏡に映ると、左右が反転するといいます。そうでしょうか?
頭は上に映り、胸は下に映り、右手は右側に映り、左手は左側に映っています。なんにも反転していないのではないでしょうか。鏡の向こうに入り込んだ自分がいてこっちを向いていると考えるから、左右が反転していると感じられるだけですね。前後は反転してるんじゃないですか?

三面鏡とかで、2枚の鏡が直角になるようにして、そこに自分を映してみてください。いわゆる「左右反転」のない自分が向こう側にいます。これ、変な気分ですよ~。(三枚の鏡を互いに直角に置くと、入射した光が、光源の向きに帰ってきます。月面にアポロが置いてきた鏡の原理はこれ。自転車の反射板の原理もこれ。交通標識なんかで、ヘッドライトの光を受けると運転者に光って見える塗料の原理もこれ。)

さて、完全な左右両手があったとします。右手を鏡に映すと「左手」になります。
右手用の手袋を鏡に映して、鏡の中からそのまま取り出せれば「左手用」になります。

こういう、右手と左手の関係、鏡像と重ね合わせることができる関係、こういうのを「手のひら関係」=「chirarity(カイラリティ、キラリティ)」といいます。

野依さんがノーベル賞を受賞した時に話題になったのが、分子のキラリティでした。

今年のノーベル物理学賞で話題になった、「CP対称性の破れ」という言葉がありますが、PはParityのことです。これが、上でちょっと触れた鏡像関係の話なんですね。

(ひょっとして、冒頭に掲げた歌は、時間対称性(T対称性)の話だったのかな?)

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