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2008年11月11日 (火)

解剖実習

2008.11.9付 朝日歌壇より
今君がするりと立てたるその指は解剖実習終えて来し指:(東京都)宇佐美祐貴
 永田和宏 評:その指が解剖実習を終えてきた指であることを作者は知っている。恋の歌と取ったが違うかも知れない。

私も、恋の歌かとは思います。ただ、人間が散文的にできてますので、あんまり艶のある解釈ができない。

解剖実習を終えた人の指はホルマリン臭いのではないか、などと思ってしまうのです。

私は人体解剖はしたことがありません。動物学実習で、大きなヒキガエルのホルマリン漬けのを2匹与えられて、徹底的に解剖したことがあるだけです。
ホルマリン漬けのカエルを解剖すると、自分の手がホルマリン漬けになって、ごわごわに固まり、風呂に入っても皮膚表面の触覚は回復しないし、食事もホルマリン臭かったことを覚えています。鼻もバカになっていて、何にも匂いが感じられない、そんな実習をしました。

それを思い浮かべて、ホルマリンの匂いと、献体なさった方への感謝の念と、複雑に絡み合った「恋」の想いなのでは、と取っています。

◆ふと記憶が飛んで。

かつて原爆のフィルムを買い取って、公開する10フィート運動に少しかかわったことがありました。

その成果の映画の上映会に行ったとき、上映が終わって被爆者の方のご挨拶がありました。その時に伺った言葉で忘れられない言葉があります。

 今、ご覧になった映画の中には決して表現されていない事実が、あの広島の現場にはありました。それは、においです。亡くなった方々の遺体が腐っていく、そのにおいです。・・・

匂いというものは、記憶と強く結び付きます。そして、映像や、文章には現われてこないものです。

視覚的な詩はあっても、嗅覚的な詩はむずかしい。匂いのことを書いても、情景を共有しにくい。

そんなことが頭をよぎっていきました。

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