カバキコマチグモ
2008.11.24付 朝日歌壇より
孵化したるあまたの子蜘蛛群がりて母蜘蛛を食ふ秋の夕暮れ:(松山市)吉岡健児
ここに詠まれたクモは「カバキコマチグモ(樺黄小町蜘蛛)Chiracanthium japonicum」です。
日本の在来種では毒性が一番強いそうです。でも積極的に攻撃してくるわけではありません。興奮させないようにすればよいのです。
イネ科の草の葉をチマキみたいに巻いています。その中で産卵して孵った子グモは1回脱皮した後に母グモを食べます。
卵を守っている巣を、うっかり不用意に壊すと、警戒心が高まっている母グモにかまれることはあるようです。そういう事故はそれなりに起こっているようですが、死者が出た話は聞きません。
ヒトの倫理には反するかもしれませんが、こういう生き方を選択した生物種であることを否定することはできません。その生き方の尊厳は尊重しなければなりません。
卵を産みっぱなしにするジョロウグモなどは多くの卵を産まなければなりませんが、カバキコマチグモでは、最初の期間を守られるので生存率が上がり、卵の数は少なくて済むのです。
どちらにせよ、最終的に生き残るのは1,2匹ということになります。そうでなければバランスがとれません。
毒グモが繁殖して増えたら大変だなどと騒がないでください。生態系が健全ならば、個体数はバランスしてむやみに増えたりはしないのです。共生とはそういう生き物ともバランスしながら生きることなのです。
決してヒトが生存を許した生物とのみ、一緒に生きる、ことではありません。
「崩彦俳歌倉」カテゴリの記事
- 榠樝(2021.02.01)
- オオスカシバ(2020.10.06)
- 猫毛雨(2020.04.20)
- 諏訪兼位先生を悼む(2020.03.25)
- ルビーロウカイガラムシ(2020.01.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント