たたら
2008.11.24付 朝日歌壇より
かぎろいの鉄の炎は燃えつきてたたらの跡に夕陽さすのみ:(広島県)今井洋子
「たたら」というのは漢字で書くと「踏鞴」、足踏みのフイゴです。(「たたらを踏む」という成句がありますね。)
日本古来の製鉄法の名前が「たたら製鉄」なのです。出雲が一番古いのかな。
炉を組み、砂鉄、木炭、砂鉄、木炭・・・と積んでおいて、火を起こし、たたらで強制的に空気を吹き込んで高熱にし、木炭で砂鉄(酸化鉄)を還元して鉄をつくります。(高校化学の酸化還元のところでよく使った教材です。)
砂鉄を採るための「鉄穴流し(かんなながし)」は日本最古の公害だとか、大量の木炭を消費するためにやはり森林が荒れたとか、いろいろあったようです。
いったん炉を稼働したら、何日間も、砂鉄、木炭、を交互に供給し続け、休むことなくたたらを踏み続けました。
完了したら、その炉は壊してしまいます。一回きりしか使えません。
多分、水を浴びせかけて一挙に冷やしたことでしょう。すると、おそらくかなりスポンジ状の鉄がとれたのだと思います。(液体になって溶け流れて底にたまるのは温度的に無理だったのではないでしょうか。)
その、鉄塊を壊して、きれいに固まったわずかの「玉鋼」を取り出したのだと思います。品質の低い部分も、別の用途には使えたかもしれません。
そのよう歴史的背景。ひょっとしたら、たたらの実演を見て、水をかけられた真っ赤な鉄が激しい湯気やかげろうをのぼらせながら、冷えていく様をご覧になったかなぁ。
こんなイメージで歌を読み返すと、また新たな感興が湧くと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B8%8F%E9%9E%B4%E8%A3%BD%E9%89%84
↑ここに少し解説があります。
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