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2008年10月29日 (水)

GFP

2008.10.27付 朝日俳壇より

クラゲからノーベル賞の良夜かな:(飯塚市)釋 蜩硯
 金子兜太 評:前書きを付けて、いつまでも楽しませて欲しい。

芸術作品は、作品だけで鑑賞されるべきです。前書きがあってそれを評に持ち出すのなら、読者にもその前書きを提示したうえで評をつけるべきです。はぐらかされた感じがします。

上の句に関して、前書きにはおそらく「オワンクラゲの発光たんぱく質からノーベル賞受賞。・・・」というような前書きがあって、金子氏はそこから理解なさったのでしょう。でも、新聞紙上を大いににぎわせたノーベル賞受賞騒ぎでしたから、前書きなしでも、出来事の筋書き自体は理解できる方の方が多いのではないでしょうか?

もし、これが俳句ではなく、短歌の形式で作られていたら、選者の永田氏が選んでいたかもしれません。永田氏は物理学科を出てから生物・医学の方へ進まれて現在京都大学再生医学研究所の教授をなさっている方ですから、研究所では毎日のように、このノーベル賞の対象になった「緑色蛍光タンパク質=GFP」を利用しているはずです。GFPの詳細まで知ったうえでの「評」を読みたかったな、という思いがします。

◆2008.7.28付 朝日歌壇にこんな歌がありました。

三ケ月でヒトの体のタンパク質入れ替わるとう生の不思議:(名古屋市)諏訪兼位
 高野公彦 評:注に「永田先生の『タンパク質の一生』を読んで」とある。

永田和宏 著、「タンパク質の一生 生命活動の舞台裏」

                岩波新書(新赤版)1139、2008年6月20日 第1刷発行

この本の150ページに「およそ三カ月で体内のタンパク質はほぼすべて入れ替わるということになる。つまり、タンパク質に関して言えば、私たちは三カ月で別人になってしまうということなのである」という記述がありまして、それを踏まえた歌です。

この本は、高度で先端的な内容が、平易で分かりやすい文章で書かれています。高校の生物をちょっと超えるくらいの知識で読みこなせます。好奇心旺盛な方なら、一挙に読み通してしまわれるでしょう。

ところで、この歌の作者の諏訪兼位さんという方は、高名な地質学者でいらっしゃいまして、実は歌人でもあって、朝日歌壇に二百を超える歌が採られたという方なのです。

岩波からこんな本も出しておられます。

諏訪兼位 著、「科学を短歌によむ」

            岩波科学ライブラリー136、2007年10月5日、第1刷発行

この本では、たくさんの歌人の歌が紹介されています。永田さんの歌も四首ほど取り上げられています。

というわけで、朝日歌壇上に、いろいろな経緯の人間関係が投影されているのです。

最後に、上の諏訪さんの著書に紹介されている永田さんの歌を一首。

肉体の死にやや遅れ億の死の進みつつあり Tubercule bacillus(ツベルクル・バチルス)

結核で亡くなった母親を詠んだ連作中の一首です。

結核で人が死んだあと、少しおくれて体内に寄生していた何億というおびただしい数の結核菌が、つぎつぎに死んでゆく、と詠んでいる。死を、医学的なものの見方から、冷静にみつめている。

と、諏訪さんは書いておられます。

いかがでしたでしょうか。理系と分類される方々の歌の世界も豊穣なものです。

(except me)

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