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2008年10月 7日 (火)

鉦叩(かねたたき)

10月6日付 朝日俳壇より

住み慣れし壁のうちより鉦叩:(秦野市)波田野紘一郎

一叩きごと白々と鉦叩:(高槻市)日下聰一
 長谷川櫂 評:「白々と」とは鉦叩の声の印象。一声のたびに白を感じるのだ。芭蕉の<海くれて鴨の声ほのかに白し>と同方向のとらえ方。

鉦叩の句が二つも載るなんて、秋だなぁ、と感じさせます。

ところで、長谷川櫂さんの評には私は納得していません。(恐れ多いことです)。

カネタタキのチッ、チッというかすかな声が聞こえてくるとき、それは、「壁のうち」かもしれませんし、障子のかげかもしれませんが、今まで気づいていなかったものが、ふと気づいた、というふうに聞こえてきます。

その声に耳を傾けていると、私には、その声と私の間の空間が澄み渡っていくように感じます。雑事の漂う部屋の空気の中に、そこだけ、何もない純粋な美しい澄んだ清浄な空間が出現するように感じられます。その空間を表現するのに「白々」という言葉を選ばれたのではないか、というのが私の鑑賞です。

芭蕉の「ほのかに白し」は、夕暮れの暗さの中に、光を感じさせる白ですが、日下さんの「白」は、無色透明、何もない清浄な空間と感じられます。カネタタキのチッ、チッというかすかな声は「あたたかさ」でもない感じがします。むしろ、秋のひんやりした空気を際立たせますね。

ど素人のたわごとでした。長谷川さんごめんなさい。

◆昔話:化学の実験ではいろいろな「色」が出現します。多くの生徒は、「無色透明」というものを知らないのですね。色のついていた溶液から色が消えると「白くなった」というのです。「これは無色というんですっ」とよく説明したものです。

「無色透明」「有色透明」が区別できないんですね。

白というのは、入っていった光がすべての波長で反射されて返ってくることです。ですから白は色ではありません。

黒というのは、入っていった光がすべての波長で吸収されて返ってこないことです。ですから、黒も色ではありません。

入っていった光のうち、ある波長が吸収されて、残りの波長の光が返ってくるとき、その物体に色がある、といいます。

◆さて、鉦叩の声は、「白」なのか、「黒」なのか、何かの「色」があるのか・・・。

どういうふうに鑑賞しますか?

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